【7月30日 ActiPress】「いせひでこ絵本原画展」が、安曇野市の「森のおうち」で開かれている。“旅する絵描き”いせひでこさんは、その数々の絵本やエッセイなどで、多くのファンの熱烈な支持を受けている。今回の原画展は、最新作の絵本『ルリユールおじさん』(理論社)の原画が中心。この作品は、別冊太陽編集部『この絵本が好き!』2007年版で1位に選ばれ、さらに2007年講談社出版文化賞絵本賞を受賞。今、最も注目を集めている日本の絵本だといえる。

 物語の舞台はパリ。大切にしていた植物図鑑が痛んでしまい、少女ソフィーは途方にくれる。ソフィーは痛んだ図鑑を抱えて街を歩きまわり、路地裏のアトリエで仕事に没頭する老ルリユール(フランス語で製本職人のこと)と出会う。そこから、2人の交流がはじまる…。1冊の本のかけがえのなさ。伝統的な手仕事をかたくなまでに守る製本職人の誇り。ひととひととの絆、過去と未来との絆。喪失と再生。様々なメッセージを、この絵本から読み取ることができるだろう。

 展覧会の見どころは、この『ルリユールおじさん』の「デリケートで暖かく、どこか孤独な」(Seuil社、マトゥー氏)水彩による全原画を堪能できることだろう。「いせブルー」として知られる青を基調としたパリのサンジェルマン界隈の風景も多数、含まれている。

 会場となっている絵本美術館&コテージ「森のおうち」は、安曇野の美しい森の中にある、それ自体がおとぎ話のような空間。重要な絵本原画展が定期的に開かれ、全国から絵本ファンが終結する。7月25日には、パリ管弦楽団で活躍するチェリスト佐藤光さん、それにピアニストの松本望さんが駆けつけ、今回の原画展のための特別コンサートが開かれた。原画展は8月28日まで開かれている。大自然の爽やかな空気と光を浴びて、いせひでこさんの原画に接するのも、素敵な夏休みの過ごし方だろう。

 『ルリユールおじさん』は今秋にフランス語版(Seuil社)が出版される。また、9月17日から10月10日の間、パリ6区の区役所の大ホールで<いせひでこ絵本原画展「絆」in Paris>が開かれる。『ルリユールおじさん』の原画のほかに、いせひでこさんの代表作の数々が展示される。活発な人道的活動で知られるダニエル・ミッテラン財団が後援。オープニングには、同財団代表でミッテラン元大統領夫人のダニエル・ミッテラン(Danielle Mitterrand)さんのスピーチが予定されている。

連絡先:絵本美術館&コテージ「森のおうち」
安曇野市穂高有明2215-9
Tel:0263-83-5670
Fax:0263-83-5885