【7月9日 AFP】国連教育科学文化機関(ユネスコ、United Nations Educational, Scientific and Cultural OrganizationUNESCO)は8日、「新世界七不思議」の選定を非難した。ユネスコは世界遺産指定機関。

 ユネスコのスー・ウィリアム(Sue Williams)広報官は「今回の投票はユネスコが定める世界遺産選定とは異なる基準と目的にもとづき行われた。ユネスコのもつ大きな視野とは相容れない」とコメントした。

 同じくユネスコのクリスチャン・マンハート(Christian Manhart)氏も、「選ばれなかった候補地の国々に否定的なメッセージを送ることになる。候補地のすべてに選ばれる価値があったのは明らかだ。それがたった7か所に絞られてしまったことがまちがい」と投票を批判。

 「古代には七不思議で足りたのは、当時の世界が地中海周辺地域に限られていて、今よりずっと小さかったからだ」

 古代のから言い伝えられた世界七不思議のなかで唯一現存するギザ(Giza)のピラミッドがあるエジプトも、新しい七不思議には否定的だ。

 エジプト考古最高評議会のザヒ・ハワス(Zahi Hawass)事務局長は「世界に唯一残る、真の七不思議のピラミッドの価値がこの投票で損なわれるわけではない。歴史を記すのは人々の寄せ集めではない。今回の投票に価値はない」と言い切った。

■選出された「新七不思議」

 今年1月、スイスの民間財団が「新世界七不思議」の投票を組織、1億人近くがインターネットや電話で投票に参加した。その結果、中国の万里の長城(The Great Wall)、ヨルダンのペトラ遺跡(The pink ruins of Petra)、ブラジル・リオデジャネイロのキリスト像(The statue of Christ the Redeemer)、ペルーのマチュピチュ遺跡(The Incan ruins of Machu Picchu)、メキシコ・チチェンイツァのピラミッド(The ancient Mayan city of Chichen Itza)、イタリア・ローマのコロシアム(The Coliseum)、インドのタージマハル(The Taj Mahal)の7つが選ばれた。

 最終候補まで残りながら落選したのは、ギリシャ・アテネのアクロポリス(Acropolis)、パリのエッフェル塔(Eiffel Tower)、イースター島(Easter Island)のモアイ(Moai)像、英国のストーンヘンジ(Stonehenge)、スペインのアルハンブラ宮殿(Alhambra palace)、カンボジアのアンコールワット(Angkor Wat)、ニューヨークの自由の女神(The Statue of Liberty)。

■動機はバーミヤーンの破壊と再建

 今回の投票を最初に提案したのはスイスの映画監督で博物館学芸員のバーナード・ウェーバー(Bernard Weber)氏。アフガニスタンのバーミヤーン(Bamiyan)で2001年、当時のタリバン(Taliban)政権が仏像を破壊した事実に衝撃を受け、新世界七不思議の選定を思い立ったという。7日に行われた発表式典の収益金の一部は、このバーミヤン仏像の再建に充てる予定だ。

 しかしユネスコはバーミヤーンの仏像再建にも反対だとマンハート氏は表明。破壊された仏像の一部がまだ現地の石窟の中に残っており、「ここに新しい仏像を建てれば、もともとあった仏像を否定することになる」という。

 さらにイスラム教徒が多いアフガニスタンで、これから仏教の「偶像」を建設するのは難しいだろうとも指摘。

 「ウィーバー氏はアフガニスタン政府から許可を得たわけではない。権限がなければ何もできない」

■選ばれた各国の反応

 中国は「新世界七不思議」のニュースを報道しなかったため、万里の長城を訪れた多数の観光客は、選出の事実を知らなかった。現地の観光拠点となる八達嶺(Badaling)の職員は「いつものようにたくさん観光客が訪れたが、『七不思議』に選ばれたから来たというわけではないと思う。もちろん、中国全体の栄誉であることに変わりはない」とコメントした。

 インドのタージマハルは、祝賀の打ち上げ花火に照らし出され、周辺では菓子が配られた。

 「タージマハールが象徴する愛のメッセージの勝利だ」と、アグラホテル・レストラン協会(Agra Hotel and Restaurant Association)のRakesh Chauhan会長。

 ヨルダン観光省は、ペトラ遺跡を訪れる観光客が、現行の年間40万人から倍増するだろうとの見通しを示した。

 ペルーでは、標高2400メートルのマチュピチュに数百人が集まり選出を祝い、メルセデス・アラオス・フェルナンデス(Mercedes Araoz Fernandez)貿易・観光相は「マチュピチュが選ばれたことは、国民が一体となれば目標達成が可能なことを示すもの」と語った。

 メキシコのユカタン(Yucatan)半島にあるチチェンイツァ遺跡では、集まった数千人が歓声をあげマヤの踊りの輪に加わった。

 ブラジルのリオデジャネイロでは「Live Earth」コンサートの最中にリオデジャネイロのキリスト像選出のニュースが伝えられ、盛大な拍手が巻き起こった。(c)AFP