【パリ/フランス 2日 AFP】警察当局は1日、先日盗まれた画家パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の作品2点が早急に発見される可能性は低いと発表した。これは、26日深夜から27日未明にかけて、パリ市内にある同画家の孫娘、Diana Widmaier Picassoさんの自宅から盗まれた2作品について述べたもの。

■早期発見は困難か

 「困難で時間のかかる捜査になるでしょう」情報筋は語る。捜査官らは、美術コレクターからの依頼で盗まれた可能性や、大物を盗みたいというケチな泥棒により盗まれた可能性など、いかなる動機も考慮に入れているという。

 盗まれた2作品は、娘を描いた「人形を抱くマヤ(Maya with Doll)」(1938)と、2人目の妻の肖像画「ジャクリーヌ(Portrait of Jacqueline)」で、総額5000万ユーロ(約78億1950万円)相当と見られている。その他にも、「Marie-Therese at age 21」という作品も盗み出されている。

■幅広い捜査網を敷く警察

 この2作品の詳細な情報は、フランス国内の警察機関、および隣接する国々に国際刑事警察機構(Interpol)を通じて配布されたと、芸術品密売を捜査する警察当局のBernard Darties氏は語った。ディーラーやギャラリーにも情報は知らされたという。

 Darties氏によれば、芸術大作の盗難の80パーセントにおいて、犯人は時期を見計らっていた泥棒だという。作品を売って、一儲けしようと盗みを働くが、販売は不可能なことに気付く。盗まれたピカソ作品の多くは、警察による盗難通知の後、数年後に市場で見つかってきた。しかし、売れないと分かった犯人が、作品を破壊してしまう危険性もあるという。

 2作品が飾られていた孫娘宅は、パリ7区の高級住宅街にあったが、作品を守るための安全対策も取られていたと親族の弁護士、Paul Lombard氏は明らかにしている。

 「人形を抱くマヤ」は、ピカソの初期の油絵の1つで、緑、赤、青などの明るい色を用いて、おさげ髪をした幼いマヤが人形と木馬を抱いている姿が描かれている。マヤは盗難に遭った孫娘の母親にあたり、ピカソが交際していた女性、Marie-Therese Walterさんとの間に生まれた。

 専門家によれば、これだけの傑作を売りさばくことは不可能だという。作品は「必ず出てくる」と語るのは、フランスのアート・ギャラリー協会の代表、Patrick Bongers氏。「これほど有名な作品を、市場で売ることなどできないと思います」

 ピカソの作品で最も高値がついたのは、1905年の作品「パイプを持つ少年(Boy with a Pipe)」で、2004年5月にニューヨークで行なわれたオークションで1億420万ドル(約122億円)で取引された。

 ピカソは1973年4月8日、フランス南部のムージャン(Mougins)で、91歳で死去している。写真は「人形を抱くマヤ」(撮影日時不詳)。(c)AFP/SUCCESSION PICASSO

≫関連記事:ピカソの盗難作品3点、無事戻る