【8月5日 AFP】通常よりも深く根を張るイネの開発に成功したという日本の研究チームによる論文が4日、科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に発表された。これにより、従来のイネを全滅させるほどの干ばつでも、高い収穫量を維持できる可能性があるという。

 茨城県つくば市(Tsukuba)にある農業生物資源研究所(National Institute of Agrobiological SciencesNIAS)の宇賀優作(Yusaku Uga)主任研究員らの研究チームは、深根の陸稲「Kinandang Patong」から、深根性に関わる遺伝子「DR01」を特定し、アジアで広く栽培される浅根の水稲品種「IR64」に導入した。

 研究チームは次に、この新しいイネを標準的なIR64と共に、干ばつなし、中度の干ばつ、重度の干ばつという3つの異なる条件の高地田に植えて、収穫量を比較した。

 IR64の場合、中度の干ばつでは干ばつなしの場合の42%程度に収穫量が減少し、重度の干ばつでは全滅した。一方、DR01遺伝子を導入したIR64の場合、中度の干ばつによる影響はほとんどみられず、重度の干ばつでは収穫量が約30%減少したものの、壊滅的な打撃には至らなかった。

 宇賀氏はAFPの電子メール取材に、今回の調査結果を踏まえると、この新品種はかんがい設備のない畑(農地)に適応させることができると回答している。また、交配育種する際にDNAマーカーがなければ、期待する根の遺伝子を導入することは困難だっただろうと述べた。さらに、交配育種で改善できない場合には、遺伝子組み換え(GM)イネの開発は、耐干ばつ性を向上させるための有益な戦略の1つだと指摘した。(c)AFP