【7月30日 AFP】「がんを撃退する超音波技術」から「トマトのビタミンを増やす方法」まで、多数の特許を生み出しているオランダ南部のハイテク都市アイントホーフェン(Eindhoven)が「世界一の発明都市」の栄誉を受けた。

 人口75万人ほどのアイントホーフェンは、オランダが2009年以来3度目の景気後退に陥る中、米国のシリコンバレー(Silicon Valley)と比較されるほどに、ハイテク技術の希望の光となっている。

 米誌フォーブス(Forbes)は今月、特許の分布解析方法として広く使われている「特許密度」を用いて経済協力開発機構(OECD)の統計を分析し、住民1万人あたり22.6件の特許が申請されたアイントホーフェンを世界一の発明都市に認定した。

 欧州連合統計局(Eurostat)によると、オランダでは2011年、3238件の特許が申請され、そのうち42%がアイントホーフェン地区からだった。その中でも、100以上の企業に8000人の研究者が勤務するハイテクキャンパス(HTC)が特許出願の中心だった。

「ここでは20分に1件、新たな特許が生み出されている」と、HTCはウェブサイトで述べている。

 HTCはもともと、オランダの電機大手フィリップス(Philips)の研究施設だった。だがフィリップスは、2003年に立て続けに実施した人員削減の際、元従業員らがベンチャー企業を立ち上げるための場としてこの施設を開放し、大企業とベンチャー企業が協働する場を提供した。

 結果は、イノベーションの爆発だった。

 紙のように太陽光を反射するディスプレーパネル──広告看板の次の主流と言われている──を製造するベンチャー企業「Miortech」にとって、このキャンパスは理想的な環境だった。

「従業員は5人だけ」と、同社のハンス・フェイル(Hans Feil)最高経営責任者(CEO)はAFPの取材に語る。他の業務は、他社の研究者たちに外注しているという。また、研究施設はHTCからの賃貸だ。

「われわれは共有研究施設を使用している。極めて良い場所だ。われわれと似た考え方を持つ企業や個人に囲まれている」とフェイル氏は語った。

■オランダ経済の3本柱「ブレインポート」

 オランダ政府は2004年、フィリップスなどの大企業が相次いで大規模な人員削減を実施したことを受け、人材を囲い入れるためのブレインポート地区(Brainport Region Eindhoven)を設置した。HTCはその一部をなしている。

 ブレインポートは企業と知識集約型機関、そして公的資金を組み合わせて活発な企業活動を促進する「3重らせんコンセプト」を掲げて2011年までに域内で6万人の新規雇用を生み出し、2011年にはオランダの総輸出の8%に当たる135億ユーロ(約1兆8000億円)に寄与した。

 ブレインポートはいまや、エアポートアムステルダム、シーポートロッテルダムと並ぶオランダ経済の3本柱をなしている。目標は2020年に世界のテクノロジー地区のトップ10入りすることだ。

 だが、アイントホーフェンが世界レベルの競争力を維持するためには、ベンチャー企業への投資増強の必要性が指摘されている。「フィリップスやASMLのような大企業への依存度を減らさなければならない」と、エラスムス大学(Erasmus University)の専門家は述べる。

 オランダの特許申請件数は昨年すでに10%縮小したが、フィリップスが事業縮小をしたことが要因の一つだった。

 2013年世界イノベーション指数(Global Innovation Index)では、オランダは米国やフィンランド、ドイツ、日本を抜いて、第4位にランクインしている。(c)AFP/Jan HENNOP