【4月25日 AFP】熱帯地域に生息する捕食魚、ロービング・コーラルグルーパーは獲物を捕らえる際、仲間の魚にサインを送って獲物の在りかなどを示すことが分かったとする研究が、23日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 スイス・ヌーシャテル大学(University of Neuchatel)と英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究者3人は、オーストラリア沖やエジプト沖の岩礁でコーラルグルーパーを187時間観察し、獲物を捕らえる際に仲間の魚2匹とどのような行動を取るのかを探った。研究者らによると、魚が仲間に対して、共通の関心物に注意を向けさせるために「指示的なジェスチャー」や特定のサインを出すことが確認されたのはこれが初めてという。

 これまでの研究で、コーラルグルーパー(学名:Plectropomus pessuliferus marisrubri)とドクウツボ(同:Gymnothorax javanicus)、ナポレオンフィッシュ(同:Chelinus undulatus)の3種は協力し合って、エサを捕らえるチャンスを最大限に高めるという、特殊な関係にあることが分かっている。

■「誘い」「指し示す」サインで獲物を捕獲

 コーラルグルーパーは素早い泳ぎを得意とする。ドクウツボは小さな魚が身を潜める岩の隙間にもぐり込むことができる。ナポレオンフィッシュは、くぼみから獲物を吸い出したり、岩礁を砕くことができる自由自在の顎を持つ。

 研究によると、コーラルグルーパーは獲物を捕る際に使う2つのサインを持っている。1つ目は、体を小刻みに揺らす動作。コーラルグルーパーはこれをドクウツボの前でやり、獲物をとらえる作業に加わるよう誘う。

 2つ目は具体的な「指し示す」サイン。今度は逆立ちをして、ドクウツボやナポレオンフィッシュに獲物が隠れている場所や獲物を最後に目撃した場所を教える。研究チームの録画には、コーラルグルーパーが頭を下にして逆立ちする動作が34回記録されたが、このうち31回は、ドクウツボかナポレオンフィッシュのどちらかが、示された場所に素早く移動して獲物を探し、うち5回は獲物の捕獲に成功した。

 ヌーシャテル大学の研究者、Redouan Bshary氏によると、「動物の世界で、ポーズや指し示すジェスチャーが確認されているのはこれまでのところ、猿人類とカラスだけだ」という。 (c)AFP