【4月24日 AFP】木星の上層大気に存在する正体不明の水の痕跡は、1994年に木星に衝突した彗星に由来するものだとする研究結果を、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)が23日、国際天文学誌アストロノミー&アストロフィジックス(Astronomy and Astrophysics)に発表した。

 この水をめぐっては、赤外線望遠鏡で痕跡の水分子が発見されて以来15年間、天文学者の間で議論が続けられてきた。この水は、ガス惑星である木星の下層部から出てきたとする説もあったが、成層圏とその下の雲の層とを隔てる低温の境界を超えるのは不可能とこれを否定する見方もあった。

 ESAのハーシェル(Herschel)宇宙望遠鏡による今回の研究で、この水の大部分が木星の南半球に集中していることが明らかになった。

 水分子は、1994年7月に「シューメーカー・レビー第9彗星(Shoemaker-Levy 9)」の破片21個が衝突した箇所周辺の高高度層に固まって存在している。この木星への彗星衝突は、記録史上最も壮大な天文現象の1つだった。この衝突によって、木星の渦巻き大気の表面に黒い衝突痕が残り、数週間消えなかった。

 フランス南西部にあるボルドー天体物理学研究所(Bordeaux Astrophysics Laboratory)のティボー・キャバリエ(Thibault Cavalie)氏は「われわれのモデルによると、成層圏の水の約95%が、この彗星の衝突に起因するものだ」と話す。

 同氏は、木星の氷に覆われた衛星の1つから吹き出した水蒸気や、氷に覆われた惑星間塵などに水が由来するとするその他の可能性は排除できると、ESA発表のプレスリリースで述べている。

 彗星は、太陽系形成時に残された、太陽系初期の時代の氷と塵の塊と見られている。彗星の衝突によって、誕生初期の地球に生命の材料である水が大量にもたらされたと見ている専門家もいる。(c)AFP