【3月21日 AFP】船乗りたちから何世紀にもわたって恐れられてきた巨大イカ「ダイオウイカ」の謎に包まれた正体を解明するべく行われたDNA解析の結果が、20日に英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」で発表された。

 新発見の一つは、ダイオウイカは1種しか存在しない可能性が高いというものだ。専門家の中には、複数の種が存在するという説を唱える者もいた。また、ダイオウイカは実は希少種ではなく、深海に多くの数が生息しており、その幼体は暖流に乗って、極地域を除いた世界中の海に広まっている可能性があるという。

 DNA解析を行った生物学者らは、「ダイオウイカ属には『Architeuthis dux』の1種しか存在しないということを強く示す」証拠が得られたと述べている。もし事実ならば「この種は汎存種で、相当な数が生息している可能性が高い」という。

 バスほどの体長と、暗い深海で獲物を見つけるためのビーチボール大の目を持つダイオウイカは、地球上に存在する無脊椎動物の中でも最大級。9年前に初めて自然界で生息している姿が確認されるまでは、マッコウクジラの胃の中や海上で見つかったり、浜に打ち上げられたり、トロール船の網にかかったりする死骸でしか確認されていなかった。

 研究チームは、オーストラリア、スペイン、フロリダ、ニュージーランド、日本の海域で発見された43体の死骸を対象に、雌の親から受け継がれるミトコンドリアDNAを解析した。すると、DNAの特徴の差があまりにも小さかったことに驚いたという。「このデータは、世界には1種類のダイオウイカしか存在しないことを強く示している」とチームは述べている。(c)AFP