【3月7日 AFP】手をさっと動かすだけで、リビングの壁に映ったウェブサイトを閲覧したり、寝室の壁に投影された巨大な目覚まし時計を止めたり、あるいはインテリア全体を人が行き交う街並みや静かなビーチに変えたり――そんな未来的な家の開発が、スペインで進められている。

 現在の「スマートホーム」技術のはるか先を行くようにも思えるかもしれないが、スペイン北部バスク(Basque)地方のフエンテラビア(Fuenterrabia)に試作されたこの住宅は、空想の世界とはほど遠い。

 実際、このインタラクティブなインテリアは、既に家庭用ゲーム機で使われている技術を応用したものだ。

 このシステムを試作したチームは、操作可能なアプリケーションを壁に投影するプロジェクターと、米マイクロソフト(Microsoft)が自社の家庭用ゲーム機「X-box 360」用に開発したモーションセンサー「キネクト(Kinect)」を接続し、住民が手の動きだけで身の回りの環境を操作することを可能にした。

 その様子は、まるで魔法のようだ。

 朝起きると、手を一振りして目覚ましを止め、同時に自分のスケジュール帳を表示する。部屋の雰囲気を変えたかったら、小さなジェスチャー1つで四方の壁に動画が映し出される。人の行き交う都会の街並み、あるいは美しい海辺の光景に、部屋の半分を変えることができる。音も再現可能だ。

 Ion Cuervas-Monsさんは「Openarch」と呼ばれるこのプロジェクトを2011年11月に立ち上げ、自宅を改造してこの試作版を作った。現在は、「シンクビッグファクトリー(Think Big Factory)」と名付けられた5人の建築家やエンジニアからなるチームを率いて、その他の人々の協力を得ながらさまざまな製品の開発に取り組んでいる。

 だが、プロジェクトは4割しか完成していないという。「試作版が完成したら、個々の製品開発を進める予定です。来年をめどに取り組んでいます」(Cuervas-Monsさん)。チームは特定の機能に絞った製品群の開発を目指している。各製品は連携機能があるため、ユーザーの望みに応じて家全体をカバーするシステムを設置することも可能だという。

 さらに住宅以外でも、スーパーなどの商業施設に導入することにより、自宅、地下鉄、自家用車など、場所を選ばずに買い物ができるようになると、Cuervas-Monsさんは話している。(c)AFP/Virginie GROGNOU