【2月1日 AFP】脳の特定の部位に磁場をかけることによってたばこを吸いたいという喫煙者の衝動を抑えることができるという日本とカナダの合同研究結果が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 研究は、理化学研究所分子イメージング科学研究センター(RIKEN Center for Molecular Imaging Science)の林拓也(Takuya Hayashi)氏とカナダ・マギル大学(McGill University)モントリオール神経研究所のアラン・ダガー(Alain Dagher)氏らが共同で行った。

 研究チームは、ニコチンを欲する衝動をつかさどる脳の部位を特定し、たばこを吸えると分かった時に起きる脳神経の連携によって喫煙欲求が著しく高まることを明らかにした。この連携を阻害することにより、喫煙欲求を抑制することができた。

 1月30日に神戸からAFPの取材に応じた林氏は、今回の研究で喫煙欲求にはニコチンの欠乏だけではなく、神経メカニズムも一定の役割を果たしていることが分かったと説明した。例えば、旅客機の客室乗務員は、飛行時間の長さにかかわらず、着陸直前に喫煙欲求が高まることが分かっているという。

■磁場で「背外側前頭前野」の活動を抑制

 喫煙者10人の脳をfMRI法(機能的核磁気共鳴画像法)を用いて観察した結果、判断能力をつかさどる前頭皮質の2か所が喫煙欲求を増加させていることが分かった。実験の被験者に、たばこを吸っている人のビデオを見せたところ、目のすぐ後ろにある眼窩前頭皮質(OFC)の活動が増大した。また、実験の後にすぐたばこを吸うことができると伝えたところ、OFCの上にある背外側前頭前野(DLPFC)が活性化した。

 研究チームによると、DLPFCが活性化するとOFCの活動も促進され、喫煙欲求が高まることが分かった。そこで経頭蓋磁気刺激法(TMS)という方法で局所的な磁場をかけてDLPFCの活動を抑制したところ、OFCの活動は喫煙の可能・不可能の影響を受けなくなり、結果的に喫煙欲求が下がった。

 林氏は、今回の研究結果はたばこだけでなく他の依存症の治療法の開発にもつながる可能性があると話している。(c)AFP