【11月26日 AFP】海水の酸性化によって南極海(Southern Ocean)周辺に生息する「海の蝶(sea butterfly)」とも呼ばれる浮遊性巻貝の殻が溶解していると、欧米の研究チームが25日発表した。
 
 英南極研究所(British Antarctic Survey)は、声明で「海洋の酸性化が海の生態系と食物網に著しい影響をもたらすとの予測を裏付ける発見だ」と指摘。化石燃料の燃焼による二酸化炭素(CO2)濃度の上昇が原因で起きている海水の酸性化によって、生物に害が生じている貴重な証拠を示す研究だと説明している。

 小さな浮遊性巻貝は殻を失っても必ずしも死ぬわけではないが、鳥や魚など捕食者の餌食になりやすくなり、病気にもかかりやすくなる。また浮遊性巻貝を中核的存在とする食物網では他の生物に連鎖的に影響が出る恐れがある。

 世界の海は人間が排出するCO2の4分の1以上を吸収しており、これによって海が酸性化が進んでいる。研究者によると18世紀後半の産業革命以降、海の酸性度は30%上昇し、少なくとも過去5500万年間に達したことのないレベルに至っているという。

 今回調査した浮遊性巻貝は08年2月に、南極海の一部であるスコシア海(Scotia Sea)で採取された。(c)AFP