【6月20日 AFP】才能は不要――完璧なポップソングは、コンピュータープログラムで作った曲をリスナーの反応によって調整し、「進化」させていくだけでできるとする英国の研究が、18日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

「ダーウィンチューンズ(DarwinTunes)」と呼ばれるこの実験は、テレビやラジオでヒットする楽曲を作る上で、消費者の選択がいかに重要かを実験する目的で始まった。

 実験ではシンセサイザーのビートとメロディー、さらにチャイム音やブンブン音、ビープ音などのノイズをランダムに生成するプログラムを使い、長さ8秒間の音源を作成した。その音源をオンライン・ユーザーたちが聴いて投票し、「耐えられない」から「大好き」までの評価に分けた。

 この後、「大好き」と評価された音源は、同じく高い評価を得た他の音源と1つに合体された。論文によると、このような「進化」が進む度に、音源はリスナーにさらに好まれるようになったという。

■「自然淘汰」は音楽にも当てはまるのか

「消費者の選択こそが、ポップ音楽の絶え間ない前進の駆動力なのかどうか、という点に興味を持った」と、論文の共著者で英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のアーマンド・リロイ(Armand Leroi)教授(進化発生生物学)は語る。

「ある音源ではなく、別の音源をダウンロードするたびに、その人は選択を実践しているのだ。数百万回の選択は、数百万回の創造行為だ」とリロイ氏。「結局のところ、そのようにして自然淘汰から地球上のすべての生物が作り出されたのだ。結果を事前に知ることができない変異と選択だけでそれが可能ならば、同じ方法でポップ音楽を作ることだって可能なはずだと私たちは考えた。そこで、それを説明する実験を始めた」

 実験にはウェブのリスナー約7000人が参加。最低の評価を受けたノイズ音源はすぐに「絶滅」し、耳に心地の良い音源は長く「生き延びた」という。この「自然淘汰の下でおよそ2500世代を経た結果、音源は単なるノイズから魅力ある音楽に変わっていた」と論文は述べている。

■大勢のリスナーの反応が生み出す音楽性

「1人のユーザーが操作するのであれば、私たちの進化音楽エンジンで相当良い音楽を作り出せることは分かっていた。だが、大勢のリスナーからの反応にもまれるという、よりダーウィンの進化論的な環境下で同じような音楽を作れるかどうかを知りたかった」と、同カレッジ所属の共同執筆者で、蚊の遺伝子生物情報学を研究するのボブ・マッカラム(Bob MacCallum)氏は語る。

 マッカラム氏は「学生たちと一般からの貴重なインプットのおかけで、それは可能だと自信を持って言えるようになった」と述べた。

 同プロジェクトは現在も「darwintunes.org」で続いている。(c)AFP