【5月13日 AFP】ピンヒールを履いた女性やダチョウの歩き方に、歩きやすい義足のデザインを開発するヒントがあるとする研究が、9日の英国王立協会(British Royal Society)の学術誌「Journal of the Royal Society Interface」に発表された。

 英ロンドン大の王立獣医カレッジ(Royal Veterinary College)のジム・アッシャーウッド(Jim Usherwood)氏らの研究によると、膝よりも高い位置までの義足や人型ロボットの脚部として最適なのは人間の脚の形状ではなく、ダチョウや、「ブレードランナー」の異名で知られる南アフリカの陸上選手オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)さんの義足のような形だという。

 アッシャーウッド氏はAFPの取材に、「少なくとも歩行に適した義足を作る上では、人間の脚そっくりにデザインするのは間違いかもしれないことが分かった」と語った。足首の位置が高ければ「足部を重く、硬くしなくても前後に動かす力が得られる」として、「見た目を気にしなくても構わないなら、足首をできるだけ高くするべきだ」と提言している。

 アッシャーウッド氏の研究チームによれば、かかとから接地し、その脚を軸に体を前に出し、爪先で蹴り出すという人間の歩き方は、人間の脚の形状からみれば最も合理的だが、その形状そのものは幾つかの点で「合理的でない」という。これは人間と類人猿以外では「極めて独特な」歩き方で、ダチョウなどの他の2足歩行動物は、かかとを地面に付けることなく、長い腱をバネのように使って歩く。

 研究によると人間の足の形状は、人類が進化する初期の段階で、生き延びるため歩くことと速く走ることを両立させる必要性から今の形になったまま、獲物を追ったり外敵から逃げるため全力疾走しなくて済むようになった後も変わらなかった。また研究チームは、ハイヒールを履いた女性は、この「接地、前進、蹴り出し」をするために尻を振る必要があるのだと指摘した。

 研究チームによると、人間の足と「かかと―足裏―つま先」という歩く動作には、前進の際に、蹴り出す力を生む筋肉(ふくらはぎ)と、衝撃を緩和する筋肉(すね)の負担を減らすという利点がある。筋肉は力に抵抗するときにエネルギーを消費するため、このことは利点となる。

 それゆえ、筋肉のない「義足やロボットの脚は人間の脚を模倣するべきではない」と研究チームは指摘。「人間の脚と似つかない形状のほうが、より自然に人間らしい歩き方が可能になり、狭い歩幅で素早く歩くことができる」と結論付けている。(c)AFP