【4月22日 AFP】暗闇で目が見えない夜盲症のマウスに光を感受する神経細胞を移植したところ、視力の向上が確認されたとする実験論文が18日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表され、一部の視力障害の治療に応用できるのではと期待されている。

 実験を行ったロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)のロビン・アリ(Robin Ali)氏がAFPに語ったところによると、移植したのは薄暗がりでの視力に必要とされる棒状の光受容細胞である桿体(かんたい)細胞。実験では、マウスの子どもの網膜から取り出したこの細胞を、同じ細胞を全く持たず暗闇で目が見えない成体のマウスに移植したという。

 アリ氏によれば「この実験は、移植された光受容細胞が正常に機能し、視力改善へとつながりうることを示した初めての証拠となった」という。また「まだ概念実証に過ぎず、臨床応用にはまだ遠いが、最初の一歩が踏み出せた」とも話している。

 アリ氏とその研究チームは、実験用マウスの両目にそれぞれ約3~4万個の桿体細胞を移植し、視覚野が刺激に反応していることを脳画像により確認した。

 しかしこれだけではマウスが実際に視力を得たかどうかは確認できないため、さらに行動実験を行った。

 研究チームは、水を張った小さな水槽に移植前のマウスを入れ、視覚的サインで陸地へ上がるための道を示した。だが暗闇での視力が無い移植前のマウスは、明かりが消されると陸地を探し当てることができず、水の中をぐるぐると泳ぎまわるだけであった。

 一方「移植を行ったマウスは陸地へ一直線に向かった。これは移植した細胞による結果だ」とアリ氏は説明している。

 アリ氏は今後、全ての光受容細胞を失い、完全に失明した実験対象が細胞移植によって視力を回復できるかどうかを調べるため、さらなる研究を行う予定だという。(c)AFP