【2月8日 AFP】恐竜が闊歩(かっぽ)するジュラ紀に生息していたキリギリスの歌声を復元したとする論文が、6日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。「これまでに記録された中では最も古い歌声」だという。

 英国の研究チームは、中国で発掘された約1億6500万年前の極めて保存状態の良い「Archaboilus musicus」というキリギリスの化石を調べ、こすり合わせて音を出していたとみられる長さ約7センチの羽の特徴を基に音色を復元した。単純かつ澄んだ音色で、夜間に遠くまで届く音だという。

 論文は、このキリギリスの周囲は滝の轟音や風の音、川を流れる水の音、両生類や昆虫の求愛の鳴き声といった音で充たされていたと考えられるとしている。

 昆虫の聴覚器官や発声器官の専門家で論文を共同執筆した英ブリストル大(University of Bristol)のダニエル・ロバート(Daniel Robert)氏(生体力学)は、単純な音色は夜の森でメスをひきつける最良の方法であった可能性があると指摘する。「大きく明瞭な声で歌うと、自分の存在と位置、そして歌い手としての資質を知らしめることになる。メスはこのメッセージに返答するか否かを判断する…単一の音色を使えば、オスの歌声はより遠くへ、より美しく響き渡ることができ、より多くのメスを魅了することができただろう」

 一方で、歌声で捕食者に気づかれたこともあったかもしれない。この約1億年後に昆虫は、コウモリなどの捕食者の耳では聞くことができない周波数で鳴く能力を身につけ始めた。(c)AFP

【参考】復元した音色の音声ファイル(ダウンロードできるのは2月17日まで)