【2月2日 AFP】クモの巣はなぜ、あちこち破けても、ハリケーンが来ても壊れないのか――? その謎の答えは巣の構造にあったとする報告を、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)の研究チームが1日、発表した。衝撃に強い構造を探し求めるエンジニアたちの関心を集める発見だろうと述べている。

 クモ類の糸は絹のように見えるが、実は鋼鉄や、防弾チョッキに使われる繊維よりも強いことで知られる。しかしそれだけでは、裂けた場合にも持ちこたえる理由の説明にはならない。

 では、引き裂かれた後もクモの巣全体が落ちずに済むのは、どうしてなのだろうか。MITのマーカス・ビューラー(Markus Buehler)氏率いるチームは、研究室での実験と観察、コンピューター・モデリングを用いてこの謎を解明した。

 まず、クモの糸の分子構造を詳細に調べたところ、不定形タンパク質と、秩序立って並んだナノスケールの結晶という独特の組成が分かった。

 ここに木の枝が落ちるなどの圧力がかかると繊維が伸びるが、その状態は4段階に分かれる。すなわち、最初は直線的に引っ張られ、次にタンパク質が変性して糸が引き伸ばされる。さらに衝撃を吸収して硬化する段階があり、最後に摩擦によって引き起こされる切断点に至る。

 クモが出す糸には2種類あり、耐久性の秘密はその2つの糸の関係にある。1つは巣の中心から外へ向かって螺旋状に張られている「横糸」(粘着糸)で、伸縮性が高く湿り気があってべとべとしており、獲物を捕らえる役割を果たす。一方、車輪のスポークのように巣の中央から放射状に伸びる「縦糸」(しおり糸、引き糸)は、乾いていて堅く、巣の構造を支えている。

 研究チームは、この横糸と縦糸が衝撃吸収の際に異なる役割を持ち、2つの絡み方によって巣の一部が破れても穴が広がらないことを発見した。この性質のためクモの巣は、加わった力に耐え切れない場合でも、局地的な部分を「犠牲」にすることで巣の他の部分の機能を守れる構造になっていた。

 論文の主著者でMITに所属するスティーブン・キャンフォード(Steven Canford)氏は、「エンジニアリング構造物は通常、大きな負荷に対し、限られたダメージで持ちこたえるよう設計されている。しかし極端な負荷の場合には、それはいっそう難しい。クモは高い負荷がかかった場合、その部分だけが落ちる仕組みにして巣の一部を犠牲にすることで、この問題を解決している」と述べた。(c)AFP