【1月9日 AFP】英国の宇宙物理学者スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の70歳の誕生日を記念して8日、英ケンブリッジ大学(Cambridge University)で科学ディベートのイベントが開かれたが、ホーキング博士は体調不良で欠席した。博士はイベント会場に向けて、自分は「素晴らしい時代」に生きてきたと、前向きなメッセージを届けた。

 ホーキング博士の誕生日記念シンポジウムの開かれたケンブリッジ大学には、科学者やメディア関係者が集まった。同大のLeszek Borysiewic副学長は「スティーブンは体調不良で、6日にようやく退院したところだ」と発表した。

 事前収録したメッセージで参加者に語りかけたホーキング博士は、自らの闘病生活のことよりも過去の輝かしい業績と科学の未来について議論してほしいと呼び掛けた。

「生きて、理論物理学の研究を行うには素晴らしい時代だった」と博士は語り、「人類の未来のために宇宙進出を続けよう。この壊れやすい惑星を脱出しない限り、もう1000年を生き延びることはできないだろう」と述べた。

■合成音声での会話ができなくなる危険性も

 誕生日前、ホーキング博士の個人秘書のジュディス・クロスデル(Judith Croasdell)氏は英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)の取材に、博士が加齢とともに筋肉の制御が徐々にできなくなってきており、有名な合成音声による会話ができなくなる危険性もあると語っている。

「彼の発話は徐々に遅くなっている。体調の良くない日には、1分に1単語を話すのがやっとだ」

 ホーキング博士のメッセージは「足元を見下ろさずに星空を見上げる」ことを聴衆に呼び掛ける内容で締めくくられ、会場ではスタンディングオベーションが起きた。

「見たものを理解しようと努め、何が宇宙を存在させているのかを知りたいと思いなさい。好奇心を持ちなさい。人生がどれほど困難に感じられても、そこには必ずあなたのできること、成功を収めることができるものがあるのです」(スティーブン・ホーキング博士)

(c)AFP/Jacqueline Pietsch

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