【12月12日 AFP】近親交配はふつう、遺伝的欠損を発生させ、やがて生物種を死に追いやるものだが、トコジラミ(ナンキンムシ)についてはそれがあてはまらないとの研究結果が、6日に米ペンシルベニア(Pennsylvania)州フィラデルフィア(Philadelphia)で開かれた米国熱帯医学会(American Society of Tropical Medicine and Hygiene)の年次総会で発表された。

 たった1匹の妊娠したメスのトコジラミがいれば、トコジラミはマンションの中で大量に繁殖することが可能だという。

 研究を発表したのは米ノースカロライナ州立大(North Carolina State University)の昆虫学者、コービー・シャル(Coby Schal)氏が率いる研究チーム。トコジラミは、1950年代に一度消えたものの、近年になって急増。トコジラミ対策の費用は、ニューヨーク(New York)だけでも年間4000万ドル(約31億円)に上っている。

「トコジラミがコロニーを作る上で、近親交配できることが有利に働く」と、シャル氏は説明した。

 研究チームは、ノースカロライナ州とニュージャージー(New Jersey)州の高層マンションにおけるトコジラミの遺伝子を調査した。

 その結果、個別のマンション内のトコジラミは血縁関係にあり、1つ1つの建物の遺伝子の多様性が低いことが分かった。これは、同じ祖先から、群れが発生したことを示唆している。

 また、メーン(Maine)州からフロリダ(Florida)州におけるトコジラミの繁殖を調べた結果、ほぼすべての建物で、トコジラミが建物の一室から広がっていたことが明らかになった。

「妊娠したメスが1匹いれば、コロニーを作り、繁殖を始めることができる。そのメスから生まれた子孫たちはお互いに交尾をすることができるため、指数関数的に数が増える」と、シャル氏は語った。

 シャル氏によると、ゴキブリも、トコジラミと同じく近親交配を行って生き延びることができるという。(c)AFP