【11月3日 AFP】これまで120年以上、世界各地の時刻を決める基準とされてきたグリニッジ標準時(GMT)が、世界標準ではなくなるかもしれない。その未来を協議する国際会議が3~4日、英ロンドン(London)で開かれる。

 英国王立協会(Royal Society)の主催する同会議には、世界各地から約50人の専門家が参加。協議結果をもとに来年1月、国際電気通信連合(International Telecommunication UnionITU)がジュネーブ(Geneva)で会合し新たな世界標準時の採用の是非について投票することが、英国の抵抗もむなしく決定している。

 GMTの地位を脅かしているのは、原子時計だ。新方式の採用を主導しているのは英国の歴史的ライバル・フランスで、英国にとっては国家の威信に関わる問題だ。

 GMTは天文観測に基づき、ロンドン南東にあるグリニッジ天文台(Greenwich Observatory)を通る子午線(経線)を0度として世界時刻の基準とするもので、1884年に米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれた会議で決まった。

 ちなみに、この会議の際フランスは、パリ(Paris)を基準とする「パリ標準時」を提唱。「パリ標準時」は1972年、「協定世界時(Universal Coordinated TimeUTC)」と呼称を変えたが、その基準時刻はGMTとほぼ同じとされてきた。

 UTCは、世界各地の観測所にある約400個の原子時計の計測した時刻を基に、地球の自転速度の変動から生じる「うるう秒」を修正し調整したものだ。だが、地球の自転速度と原始時計の刻む時刻とのごくわずかな差異が、携帯電話の位置情報システムなど現代社会で幅広く利用されている衛星利用測位システム(GPS)にとって問題となっている。

■「うるう秒」廃止で真昼と真夜中が逆転?

 ロンドンの会議では、「うるう秒」を廃止して原子時計のみを基準とする方式への完全移行が協議されるとみられる。そうなれば、原子時計が次第にGMTに取って代わることになるだろう。両者の時間のズレは60~90年で1分、600年で1時間にもなり、100年の間に数回の「うるう分」の調整が必要になるからだ。

 だが、GMT廃止に反対のデービッド・ウィレッツ(David Willetts)大学・科学担当閣外相は、次のように主張している。「英国の見解としては、われわれは人類が体感している実際の時間に忠実であるべきだ。それは、地球の自転に基づく時間であって、原子時計ではない。うるう秒(の調整)をなくせば、地球が自転しているという現実との接点を失い、気がついたときには正午に『真夜中』がやってくる羽目になりかねない」

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