【10月5日 AFP】スウェーデン王立科学アカデミー(Royal Swedish Academy of Sciences)は5日、イスラエルのダニエル・シェヒトマン(Daniel Shechtman)氏に2011年のノーベル化学賞を授与すると発表した。

 シェヒトマン氏が発見した高度に規則正しくシンメトリカルだが、同じパターンが繰り返されることがない準結晶(quasicrystal)を選考委員会は「驚くべき原子のモザイク」と表現した。素人の目には、このパターンはイスラムの抽象美術のように見える。

 準結晶は実験室の中で発見されたが、自然界にあるいくつかの鉱物のなかにも見つかっている。原子同士が緊密に結びついた構造によって丈夫なことから、フライパンなどの製品や、高温・機械的ストレスにさらされるディーゼルエンジンのような機械への応用も考えられるという。

 選考委員会はシェヒトマン氏の研究は「化学者の固体に対する見方を根本から変えた」と述べた。

 シェヒトマン氏は当初、同僚たちから発見内容を全否定されたり、笑われたりさえした。研究所長からは結晶学の教科書を手渡されて読んでみてはどうかとまで言われた揚げ句、最終的に米国標準技術局(National Institute of Standards and Technology)の研究グループを去るように求められた。

 しかし、選考委員会は「シェヒトマン氏の戦いは、科学者たちに物質の本質についての概念の再考を迫ることになった」と述べている。

 1941年生まれのシェヒトマン氏は現在、イスラエル北西部ハイファ(Haifa)にあるイスラエル工科大(Israel Institute of Technology)の特別教授。授賞式はアルフレド・ノーベル(Alfred Nobel)の命日にあたる12月10日にスウェーデンのストックホルム(Stockholm)で行われ、シェヒトマン氏には1000万クローナ(約1億1000万円)の賞金が贈られる。(c)AFP