【9月1日 AFP】サンゴ礁の研究から、日焼け止め効果のある錠剤が近く誕生するかもしれない。

 英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)の研究チームは8月31日、サンゴと共生している藻が紫外線からサンゴを保護する化合物を生成していたと発表した。

 チームを率いるポール・ロング(Paul Long)博士によると、サンゴと一部の藻類が熱帯の強い紫外線を防ぐ遮蔽膜を独自に生成して身を守っていることは知られていたが、その仕組みは不明だった。だが今回、米豪の研究者らと協力してグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)で採取したサンゴを研究した結果、「サンゴ礁に生えた藻が生成する化合物がサンゴに運ばれ、日焼け止め成分へと変化してサンゴと藻の両方を紫外線によるダメージから守っていると考えられる事実を発見した」という。この日焼け止め効果は、サンゴを食べた魚にも継承されていた。

「この化合物がどのように生成され継承されていくかを突き止めれば、人間の目や皮膚で同様に作用する日焼け止めを、研究室で開発できると思っている。恐らく錠剤の形になるだろう」とロング博士。現在、化合物の再現まであと一歩まで迫っており、順調に行けば2年以内に試験段階に移行、5年以内に錠剤を完成させられるという。

 サンゴと藻はユニークな共生関係にある。藻はサンゴの老廃物を使って光合成することで、サンゴに栄養を提供する。光合成には日光が必要なため、サンゴは浅瀬に生息する必要があるが、これは紫外線を浴びやすくなることも意味している。

 藻が化合物を生成してサンゴと自分を紫外線から守る仕組みは、微生物と植物のみが有するシキミ酸経路と呼ばれる生合成反応とみられるが、キングスカレッジの研究チームでは将来的にはこの化合物を活用して、熱帯の強烈な紫外線に耐えられる「UVカット作物」を開発し、途上国における持続可能な農業に貢献したいと考えている。(c)AFP