【8月29日 AFP】気候の変化は、ときに紛争の原因だと指摘されてきた。たとえば、気候の変化で収穫量が激減し、飢えた農民が都市部に流れ込んだことが、1789年のフランス革命(French Revolution)に燃料を注いだとされている。

 この説を支持する証拠は「粗雑」あるいは「逸話的」だと批判されることが多かった。だが、気候変動と暴力との間に明白な関連があること結論づけた初の科学的な研究が英科学誌ネイチャー(Nature)の8月25日号に発表された。

 これによると熱帯地方の国々では、ペルー沖から中部太平洋赤道域にかけての広い海域で海水温が高くなるエルニーニョ(El Nino)現象が発生したときは、逆に同じ海域の海水温が低くなるラニーニャ(La Nina)現象が起きたときよりも、内戦が2倍起きやすいという。

「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれるアフリカ大陸北東部を直撃した内戦と飢饉(ききん)は、脆弱(ぜいじゃく)な社会に、気候変動による干ばつによって過度のストレスが加えられたときに何が起きるかを示す典型的な事例だと、論文の執筆者らは指摘する。

■エルニーニョが内戦のリスク高める

 この研究は自然に発生する気候変動のパターンに焦点をあてたものだが、研究に参加した研究者たちは、今後数十年間に大きな被害をもたらすと予測される人類が引き起こした温暖化が原因となる暴力について、気がかりな教訓があると話している。

 研究は、1950~2004年のエルニーニョ・南方振動(ENSO)に注目し、このデータを1年間に25人を超える死者が出た内戦と重ね合わせた。データには175か国、234件の紛争が含まれ、紛争の半数以上は戦闘に関連した死者が1000人を超えていた。

 研究によれば、気候サイクルがENSOによって決まる国々では、ラニーニャ現象中の内戦の危険性はおよそ3%だったが、エルニーニョ現象のときは2倍の6%だった。ENSOの影響を受けない国々では、この危険性は2%で安定していた。また、全体としてエルニーニョ現象は世界の内戦の21%に影響を与えた可能性があり、エルニーニョ現象の影響を受ける国に限定すればその割合は30%近くに上った。

 論文の主執筆者、ソロモン・ショーン(Solomon Hsiang)氏は、目に見えないエルニーニョ現象は内戦の原因の1つだと語る。エルニーニョ現象によって作物の収量が減り、ハリケーンの被害が発生し、水を媒介とした伝染病がまん延しやすくなることで、飢えや損失、失業、不平等などが悪化し、その結果、恨みや分断の感情があおられる。内戦リスクに影響をおよぼす他の要素としては、国の人口増加率と豊かさ、また政府にエルニーニョ現象に適切に対処する能力があるかどうかなどがある。

 ショーン氏は、「ことしソマリアが飢饉になることは2年前に予測されていたが、国際援助コミュニティーのドナーたちは、この予測を真剣に受け止めなかった」と述べ、国際社会と各国政府、支援組織は今回の研究を、紛争による人道危機を防ぐために役立ててほしいという期待を示した。(c)AFP/Richard Ingham