【8月9日 AFP】メスのチンパンジーは、自己中心的に振る舞うより、自発的に他者を助ける方を好むとする研究結果が8日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。これによって、利他主義は人類だけに見られる特徴との定説は、誤りである可能性が出てきた。

 これまでの研究では、いわゆる前社会性テストで、チンパンジーは自己本位に振る舞う傾向があるとの結果が示されてきた。だが、米ジョージア(Georgia)州にあるヤーキス国立霊長類研究センター(Yerkes National Primate Research Center)の研究チームは、野生でみられたチンパンジーの寛大な行動が、研究チームがたてたチンパンジーは利己的ではないとの仮説に実際に当てはまるかを確認するため、メスのチンパンジー7匹で実験を行った。

 実験で色の違う2枚のメダルを用意し、それぞれのチンパンジーに与えた。一方はバナナ1本、他方はバナナ2本のごほうびがもらえる仕組みになっている。

 その結果、チンパンジーは社会的な選択肢(=2本のバナナがもらえるメダルを選び、1本のバナナを他者にあげる)を選ぶ傾向にあることが分かった。さらに、おこぼれを待っている側のチンパンジーが、選ぶ側にバナナ2本を選ばせようと強要せず、静かに自分の存在を示す場合に、メダルを選ぶ側のチンパンジーが最も寛大になるという興味深い結果も得られた。

 研究者らは、選ぶ側の視野に入る場所に待っている側のチンパンジーを配したことや、開ける時にチンパンジーが喜ぶ騒々しい音がする包装紙でバナナを包んだという点からも、今回の研究が、これまでの研究以上にチンパンジーの振る舞いを適切に判断できると主張している。(c)AFP