【7月19日 AFP】ロシアは18日、史上最高性能となる電波天文衛星「スペクトルR(Spektr-R)」をカザフスタンのバイコヌール(Baikonur)宇宙基地から打ち上げた。

 スペクトルRは米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)にちなんだ「ロシアのハッブル」の異名を持つが、解像度はハッブルの10万倍だという。また、炭素繊維製のペタルが開くと直径10メートルのパラボラアンテナになる。

 ロシア宇宙庁(Roskosmos)によると、スペクトルRは宇宙最深部でブラックホール、クエーサーの電波発生源、パルサーなどを探索し、これまでより数十億光年ほど初期の宇宙を観測する機会を提供するとともに、ブラックホールの謎に迫る。

 遠地点高度が約34万キロの楕円軌道に乗り、月からわずか5万キロの位置を通過する。月の引力を利用して軌道角度を変えるため、従来よりも広範囲の観測が可能だ。

 運用期間は公式には5年だが、延長される可能性もある。スペクトルRが初めて撮影した画像は今年中に公開されるものと見られる。

■長らく沈黙していたロシアの宇宙探査計画

 スペクトルRは30年前のソ連時代に構想されていた。ロシアが天文観測衛星を打ち上げるのは、ソ連時代も含めて25年ぶりとなる。

 ロシアは、11月には火星探査機「フォボス・グルント(Fobos-Grunt)」を打ち上げる予定だ。この探査機は火星を探査するとともに、火星の衛星フォボスの土を地球に持ち帰ることになっており、計画の実現が待たれていた。

 タス通信(ITAR-TASS)によると、ウラジーミル・ポポフキン(Vladimir Popovkin)宇宙庁長官は打ち上げ後、「ロシアは長い休憩のあと、宇宙の科学探査計画を再開しつつある」と述べた。(c)AFP/Stuart Williams