【6月6日 AFP】欧州合同原子核研究機構(European Organisation for Nuclear ResearchCERN)の国際研究チームは5日、反物質の一種である「反水素原子」を世界最長の16分以上(1000秒間)閉じ込めることに成功したと、英科学誌「ネーチャー・フィジックス(Nature Physics)」(電子版)に発表した。

 約140億年前のビッグバンの瞬間、物質と反物質は数の上で均衡を保っていたと考えられる。粒子と反粒子が衝突すると小さなエネルギーが生じて互いに消滅することから、この均衡が保たれていたならば、宇宙は存在していなかった。宇宙、そしてそこに住むわれわれが存在できているのは、何らかの理由で物質が反物質より優先されたためなのだ。そして反物質は今や、極めて希少な存在となっている。

 この物質と反物質の数の不均衡は、素粒子物理学における最大の謎の1つだ。CERNが行っている水素原子の低エネルギー実験で今回、反水素原子を16分以上閉じ込められたことで、反物質の謎の解明が大きく前進することが期待される。(c)AFP/Marlowe Hood