【5月16日 AFP】太陽光エネルギーで飛ぶスイスの飛行機「ソーラー・インパルス(Solar ImpulseHB-SIA」が13日、スイスのパイエルヌ(Payerne)からベルギーのブリュッセル(Brussels)まで13時間かけて飛行し、初めての国際飛行に成功した。

 ブリュッセル国際空港(Brussels Airport)に着陸したソーラー・インパルスは、ベルギー王室のフィリップ皇太子(Prince Philippe)ら数百人の出迎えを受けた。フィリップ皇太子は、ヘリコプターに乗り込んでゆっくりと着陸するソーラー・インパルスを追いかけていたという。

 大勢の拍手のなか飛行機から降りたパイロットのアンドレ・ボルシュベルク(Andre Borschberg)氏は「使った分より多く発電したよ」と語った。ソーラー・インパルスプロジェクトの共同創設者、ベルトラン・ピカール(Bertrand Piccard)氏は「最高だ」と語った。

■「エネルギー政策転換」呼びかけ飛行

 ソーラー・インパルスは、朝もやで離陸時刻を延期した後、現地時間午前8時40分(日本時間同日午後3時40分)、晴れ渡ったスイス・パイエルヌの空港から離陸した。

 ブリュッセル国際空港まではおよそ480キロメートル。フランスとルクセンブルクを高度3600メートルで通過した。

 ピカール氏はソーラー・インパルスの着陸前、「政治家たちにもっと積極的なエネルギー政策を推進するための勇気を、この飛行で与えたい」と語った。「人類が1時間あたり10億トンの原油を浪費しているのはクレイジーだよ。そんなに燃料を使う飛行機がこれからも使われ続けるなんて、誰も信じたくないだろ」

■ソーラー飛行機の新たな挑戦

 ソーラー・インパルスHB-SIAは2010年7月、太陽光発電だけで飛ぶ飛行機として初めて、一昼夜にわたる試験飛行を成功させた。同時に、有人ソーラー飛行機の最長飛行記録(26時間10分19秒)と最高高度記録(9235メートル)も打ち立てた。

 それ以降もジュネーブ(Geneva)とチューリヒ(Zurich)間など何度か飛行を繰り返してきたが、混雑する国際空港に着陸するという今回の飛行は、これまでとは異なる新しい試験飛行となった。

「ソーラー・インパルスで欧州の空を飛び、国際空港に着陸するということは、われわれ全員にとってとほうもない挑戦だ。成功するかどうかは、すべての関係当局の協力にかかっている」と、パイロットのボルシュベルク氏は語っていた。

■ブリュッセル展示後に仏航空ショーへ

 ソーラー・インパルスHB-SIAは、全長64メートルの両翼に貼り付けられた1万2000個の太陽電池でバッテリーを充電。10馬力のモーター4台がプロペラを回して飛行する。

「グリーン技術」の見本のような同機は、ブリュッセル国際空港に5月29日まで展示される。その後、6月20~26日に仏ルブルジェ(Le Bourget)で開催されるパリ国際航空ショー(Paris International Air Show)に向けて再び空を飛ぶ。

 ソーラー・インパルス飛行チームは、少し大型化した機体で、2013~2014年にアメリカ大陸横断、大西洋横断、世界一周などの飛行も予定している。速度アップについてたずねたところ、ボルシュベルク氏は「現時点でそれは、この飛行機の目標ではない」と語った。

■冒険一家のピカール家

 会長のピカール氏は冒険家の家系出身で、気球による世界初の無着陸世界一周飛行をした人物でもある。

 ピカール氏の祖父、オーギュスト・ピカール(Auguste Piccard)は、気球による最高高度記録を2度(1931~32年)打ち立てた人物だ。父のジャック・ピカール(Jacques Piccard)氏は深海探検家で、潜水艇に乗って太平洋のマリアナ海溝(Mariana Trench)で深海1万916メートルまで潜水した世界記録を保持している。(c)AFP


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