【11月25日 AFP】時差を超えて旅行した後、普段の生活リズムに戻ってからも最長で1か月ほど疲れやすく、物忘れしやすい状態が続くのは、時差ぼけが長期的に脳に変化を与えるからだという米国の研究結果が24日、発表された。

 同じような脳の働きの乱れは、昼夜逆転で働く夜勤の人や、生活リズムが不規則な人などにもみられるという。生活リズムの乱れが脳の生体構造に与える長期的影響に関する研究は、これが初めて。

 米科学誌プロスワン(Public Library of Science、PLoS ONE)に研究を発表した米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)心理学部のランス・クリークスフェルト(Lance Kriegsfeld)准教授らの研究チームは、体内時計が非常に規則正しく、人間同様に24時間を周期としているハムスターのメスを使い、週に2回、6時間ずつ生活時間を変えさせる実験を行った。この6時間という時差は、ニューヨーク・パリ間の飛行時間に相当する。

 4週間の実験の結果、休養をきちんと取らせたハムスターに比べ、生活時間帯が頻繁(ひんぱん)に変わったハムスターの方は、簡単な作業を覚えることさえ難しかった。この学習障害は、通常の生活リズムに戻してからも1か月続いた。

 1か月にわたって時差ぼけを体験させられたハムスターでは、脳で記憶をつかさどる海馬内に新しくできた神経細胞(ニューロン)の数が、規則正しく生活させたハムスターの「わずか半分」だったとという。

「私たちの研究は、時差ぼけによって海馬における神経新生が減少することを直接的に示している」と、研究に加わった大学院生エリン・ギブソン(Erin Gibson)さんは述べている。
 
 研究チームは、昼夜のシフト交替制で勤務している人や、長距離の国外旅行を頻繁にする人の間に反応時間の遅れや、糖尿病・心臓疾患・高血圧・がんといった成人病の発生率の高さ、不妊になりやすいなどの症状が既に確認されているが、今回の発見はこうした不規則な生活を送る人たちに起こり得るさらに広範囲な影響を示唆するものだとしている。

 クリークスフェルト准教授のアドバイスによると、「時差ぼけ」の影響を回避する方法としては、1時間の時差につき1日の休養日を設けるといいそうだ。また、夜勤の人が昼夜逆転した生活に体を慣らすためには、真っ暗で静かな部屋で眠るといいという。(c)AFP