【11月25日 AFP】空飛ぶ生物として地球史上最大とされる翼竜は、穏やかな風に乗る飛行は得意だったものの、強風ではほとんど飛べなかったとする研究結果が24日、学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。

 約2億2000万年前から6500万年前とされる中生代、地球を闊歩していた恐竜たちと同時期に生きていた翼竜の飛行能力について、進化生物学者らは長年頭を悩ませてきた。中には、巨大な翼竜はまったく飛べなかったという説を唱える科学者さえいた。最大で翼幅12メートル、体重200キロにもなった翼竜にとって、飛ぶことは確かに容易なことではなかっただろう。

 しかしエンジニアで古生物学者の英ブリストル大学(University of Bristol)の考古学者、コーリン・パーマー(Colin Palmer)氏は、翼竜はある種類の飛行に非常によく適応していたことを示した。

■翼の模型で風洞実験

 パーマー氏は化石標本を元に、エポキシ樹脂とカーボンファイバーからできた湾曲したシートで翼竜の翼部分を再現した。これを使用した低速風洞実験により、翼竜の翼は帆船の帆のように機能していたことが推測できた。

 さらにパーマー氏は航空エンジニアが航空機の翼を設計する際と同じような風洞実験を行い、翼竜の翼の模型の強度と空力的特性も調べた。この結果、翼竜は緩やかな上昇気流に乗って丘陵地帯や海岸地帯を飛行することが最も得意だっただろうと推測された。

 また翼の形状と、低速飛行をしていたとみられることから、骨折せずに地上に降りることができたとみられることも分かった。パーマー氏は「翼竜の骨は薄くて衝撃に弱いため、けがをしないように着陸することが重要だったのだろう」と説明した。
 
 一方で実験から、翼竜は強風に非常に弱いことも分かった。乱気流に遭えば一瞬のうちに墜落したとみられるという。「(軟着陸が得意なことと)引き換えに強風や嵐には、飛行中でも地上にいても極端に弱く、現代のパラグライダーと同じようだったと考えられる」(c)AFP