【8月26日 AFP】最初の「超大質量ブラックホール」は、宇宙を生み出した「ビッグバン(Big Bang)」から比較的すぐに生成されたとする論文が、25日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。銀河形成の理論を書き換える発見となるかもしれない。

 ブラックホールとは、重力が強大で光さえも抜け出せない領域を指す。ただ、通常のブラックホールは、超大質量ブラックホールに比べれば「こびと」のようなものだ。超大質量ブラックホールの中には、太陽の数十億倍の質量を持つものもある。

 12年前に超大質量ブラックホールが初めて発見されて以来、天文学者たちは、天の川銀河を含むすべての銀河に超大質量ブラックホールが1個ずつ、銀河の核に存在するとの結論に達した。

■ブラックホールは速いスピードで形成された

 今回、スイス・チューリヒ大(University of Zurich)のLucio Mayer教授(理論物理学)らの研究チームは、スーパーコンピューターを使ってシミュレーションを行い、最初の超大質量ブラックホールは約140億年前のビッグバンから約10億年後に誕生したとの試算を導き出した。

 シミュレーションによると、原始の大質量の銀河は銀河同士で衝突し、高密度の銀河に集散されていった。中心部のガスとちりが密集して銀河は濃密な円盤状になっていったが、やがて重力崩壊を起こした。その後、ガスとちりは再び収縮を始め、さらに濃密な雲を形成。これが最終的に超大質量ブラックホールとなった。

 これは、銀河は小さな物体を引き寄せて徐々に成長していくとする定説とは異なる。論文を共同執筆した米オハイオ大(Ohio State University)のステリオス・カザンジディス(Stelios Kazantzidis)氏は次のように説明する。

「銀河や超大質量ブラックホールなどの巨大な物体は、宇宙の歴史のなかでは急速に形成されることがわかった。その速度は銀河よりも、ブラックホールの方がはるかに上回っている。したがって、ブラックホールは銀河の成長による制限を受けないが、銀河はブラックホールの成長に制限される可能性がある」(c)AFP