【8月22日 AFP】「マグネター」と呼ばれる特殊な天体が、星の進化とブラックホールの誕生に関する理論に一石を投じたとする論文が、18日の欧州天文専門誌「アストロノミー&アストロフィジックス(Astronomy and Astrophysics)」に発表された。

 このマグネターは、地球から1万6000光年離れた、「さいだん座(Ara)」のウェスタールンド1星団(Westerlund 1)の中にある。マグネターとは、超新星爆発により生まれた特殊な中性子星で、地球の1000兆倍とも言われる非常に強い磁場を持つ。

 1961年にスウェーデン人の天文学者が発見し、恒星物理学の世界で格好の観測対象になっているウェスタールンド1は、天の川銀河のなかでも最大規模の星団だ。数百個の超巨星で構成され、太陽の約100万倍明るい星や直径が太陽の2000倍という星も存在している。

 この星団は、宇宙の基準からするととても若い。星たちはわずか500万~350万年前に起きた、あるひとつの出来事によって誕生した。ここには銀河に少数しか存在しないマグネターのうちの1個の残骸が残っていた。今回の論文によると、このマグネターの元になった星は、少なくとも太陽の40倍の質量があったはずだという。

■連星に質量を奪われて「減量」

 だが、ここで疑問が生じる。現在の主流の学説では、質量が太陽の10~25倍の星は中性子星になり、それを超える星はブラックホールになると考えられている。このマグネターの元になった星の質量が太陽の40倍もあったのならば、ブラックホールになっていなければならない。

 今回論文を発表したサイモン・クラーク(Simon Clark)氏らのチームは、チリにある欧州南天天文台(ESO)の光学・赤外線望遠鏡VLTVery Large Telescope)で観測を行い、「この星は『減量』を行うことで中性子星になることができた」との説を唱えた。

 どのようにして減量したのだろうか?論文は「答えは連星系にあるかもしれない」としている。マグネターの元の星は、伴星と共に誕生した可能性がある。つまりこの星は連星系の「親星」だった。

 この2つの星が成長するにつれ、相互作用が始まった。伴星は親星の質量を吸収し始め、親星の質量は減っていった。親星はついに爆発、超新星になる。爆発により関係性が断ち切られた2つの星は星団からはじき出され、光り輝く残骸のみが残ってこれがマグネターになった、という説をこの論文は示した。

 論文は、「この説が正しいとすれば、連星系は星の進化において重要な役割を担っている可能性がある」としている。(c)AFP