【3月31日 AFP】地震予知のツールとして、ヨーロッパヒキガエルを活用できるかもしれないとする論文が、31日の英動物学会誌Journal of Zoologyに発表された。

 09年4月6日にイタリア中部のラクイラ(L'Aquila)に壊滅的な被害をもたらし死者300人以上を出したマグニチュード(M)6.3のイタリア中部地震について、ヨーロッパヒキガエルのオスが5日前に予知していたという。

 英オープン大(Open University)の生物学者、レイチェル・グラント(Rachel Grant)氏の研究チームは、地震の10日前から、ラクイラの北74キロのサン・ルフィノ(San Ruffino)の湖で、ヒキガエルの観察を行っており、研究チームは29日間、ヒキガエルの数、気温、湿度、風速、降雨などを観察した。

 3月28日の時点で、交尾のために湖に集まってきたオスのヒキガエルは90匹以上を数えていたが、2日後には激減し、4月1日(地震の5日前)までにオスの96%が湖からいなくなった。

   求愛行動が活発になるとされる満月にあたる4月9日には数十匹が戻ってきたが、それでも総数は例年より50~80%も少なかった。

 このあと、オスの数は再び減少。オスの大半が戻ってきたのは、4月15日、つまりM4.5以上の最後の大規模な余震が発生してから2日後のことだった。

 さらに、この湖におけるつがいの数も、地震3日前にはゼロになった。地震発生日の4月6日から最後の余震までの間、産卵は一度も確認されなかった。

 オスが繁殖地で冬眠したあと、産卵シーズンが終わるまではその場を離れないといった習性を考えると、こうした行動は「驚くべき変化」だという。

 研究チームはこの謎を解くべく、超低周波(VLF)の無線受信機を使って、大気の電磁層の最上層にある電離圏の電気的活動を測定した。

 その結果、ヒキガエルの2回の「集団脱出」はいずれも、VLFに大きな変化が生じた時期と一致していた。

 電離圏のこうした摂動の原因には、ラドンの放出、地下で発生する放射性ガス、地震の前の重力波などが挙げられている。(c)AFP