【3月30日 AFP】欧州、美食界の至宝「黒いダイヤモンド」こと仏ペリゴール(Perigord)地方産の黒トリュフの遺伝情報を科学者たちが分析し、質の悪いまがい物の横行に待ったがかかりそうだ。28日の英科学誌ネイチャー(Nature、電子版)で発表された。

 きのこの1種である黒トリュフ(学名:Tuber melanosporum)はスペイン、イタリアにも分布しているが、なんといっても主要産地はフランスで、中でも南西部ペリゴール地方産の黒トリュフは、ゴルフボール大のごつごつとした見かけとは裏腹に「黒いダイヤモンド」と呼ばれ、地元農家の卸値で1キロ1000ユーロ(約12万5000円)、パリ(Paris)の店頭ではその数倍の価格で売られている。

 今回、フランス国立農業研究所(INRA)の遺伝学者が率いる3か国の科学者チームは5年をかけた研究で、黒トリュフの遺伝子サインからその産地を突き止められることを発見した。

 黒トリュフのゲノムには1億2500万の塩基対があり、遺伝子数は7500個、うち6000個はほかの菌類と共通している。残る1500個の遺伝子が、たいていはオークの木の根に共生して育つ黒トリュフの発生や成長ぶりを決定するのに主要な役割を果たす。この遺伝子が埋まっているDNAには、育った土壌の性質などによる一定の産地に特有な配列がみられ、今回発見されたこうした「DNAマーカー」は仏伊西3か国の黒トリュフ産地50か所から情報を集めた「トリュフ・データバンク」に送られるという。
 
 黒トリュフの収穫は、地中に埋まったトリュフの香りを頼りに、訓練したブタやイヌに探させるという地道な作業。これが近年、中国産など黒トリュフを名乗る安価な「えせダイヤモンド」に市場を浸食されて、欧州の生産者たちの間には怒りが広がり、生産者協会が欧州連合(EU)に自分たちの「国宝」を守るための原産地証明を行うよう求めている。(c)AFP