【3月19日 AFP】世界的ベストセラー小説の主人公、ハリー・ポッター(Harry Potter)の「透明マント」を実現できる日は、そう遠くないかもしれない――。欧州の研究者らが18日、3Dの「マント」で物体の存在を見えなくすることに成功したとする論文を米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 このマントは、ドイツのカールスルーエ技術研究所(Karlsruhe Institute of TechnologyKIT)と英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)が開発したもので、木を山積みしたような構造の光結晶によって、金色の表面にある小さなコブを隠す。

 マントの大きさは、100ミクロン X 30ミクロン。コブの大きさはその10分の1だ。「反射するカーペットの上に物体を置いたようなもの」と研究者らは説明している。レンズを通して見たり、分光法で確認すると、どの方向から見ても「何も見えなかった」という。

 マントは複数の特殊レンズで構成されており、レンズが光波を屈折させ、コブの表面で光を拡散させることで光を抑制し、コブを見えなくする仕組み。2次元の「透明マント」は既に開発されているが、3次元を対象にしたものは今回が初めてという。

 研究者らは現在、もっと大きなコブを「消す」ことが可能なマントの開発に取り組んでいる。ハリー・ポッターの透明マントほどの大きさのものは10年後くらいには実現できる可能性があるというが、ただし、それは柔らかいマントではなく硬い構造物になるだろうという。

 物体を透明化する技術については、米軍が複数のグループに資金を提供するなど、研究を積極的に推進しているとされる。(c)AFP/Jean-Louis Santini