【3月15日 AFP】恋人探しは競争が激しく、ルックスや社会的地位、経済力、話術、さらには意識下に訴えるにおいなどが決定打だと思っているとしたら、実はもっと複雑な要素があることを知って驚くかもしれない。

 ストレスにさらされている男性は、性的な好みについて意外な選択をするという研究結果が、英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された。

 論文を発表したのは、ドイツ・トリーア大学(University of Trier)のJohanna Lass-Hennemann氏ら精神生物学者の研究チーム。

■ストレス下では普段と反対の選択

 これまでの研究では、男女ともに、自分と似た相手、特に顔が似た相手と恋に落ちることがくり返し指摘されてきた。しかし、同研究チームは、動物実験の結果から、男性はストレスにさらされている場合には女性と違った行動をとるのではないかと考え、調査に乗り出した。

 研究チームは、健康で太っていない地元学生50人を集め、2つのグループに分けた。一方のグループは氷水に手を浸し、もう一方のグループは体温と同じ温度の水に手を浸した。また、唾液中のホルモン、コルチゾールの量も調べ、両グループのストレス量が異なっていることも事後に確認した。その上で、興味のあるものを眺める際に反応する「驚がく反射」を観察するため、学生の目の周囲に電極をつないで微量な筋肉反応を調査した。

 実験では、学生たちに40枚の若い女性のコンピューター画像を見せ、その反応を確認した。画像のうち30枚は被験者を見つめるヌード画像で、10枚は通常の画像だった。また、ヌード画像のうち10枚は、被験者本人に似た顔になるようコンピューターで画像処理した。

 ストレスにさらされていないグループの男性は、従来の見解どおり、本人と最も似ている女性を好んだ。一方、ストレスにさらされたグループの男性は、自分と似た女性に関心を向けず、自分と似ていない女性を好む傾向を示した。

 報告書は、ストレスにさらされた男性が、この最初の出会いの後も、自分に似ていない女性の方に関心を示し続けるかどうかはわからないものの、その可能性は高まることになるだろうと結論づけた。

■ストレス下の特殊な選択は遺伝子を残すため?

 このような行動の理由として、研究チームは、生殖の機会を増やすためという進化論的な理由を提示した。

 これまでの研究で、人は、自分と似ていない相手よりも自分と似ている相手に信頼感を持つ傾向があることが示唆されている。このことは、長期的な関係を求める男性が、自分と似た女性を好む理由を説明している。

 一方で、ストレスにさらされている人は、ストレスにさらされていない場合よりも短期的な関係を持つことも、これまでの研究で知られている。男性が自分と似ていない女性を選ぶ理由について、報告書は、より多くの性パートナーを持つことで自分の遺伝子を残す機会を増やしていることで説明がつくとした。(c)AFP