【2月26日 AFP】3D映画『アバター(Avatar)』で一躍、世界の注目を浴びるようになったバーチャルな分身、アバター。映画の大ヒットで、このアバターが人間の現実生活をより良い方向へと導く可能性があるとする米スタンフォード大学(Stanford University)の研究成果に関心を持つ人が急増しているという。25日、同大研究室をAFPが取材した。

■アバターが人間の生活モデルに

 仮想現実空間における対人交流を研究するスタンフォード大の研究室「Virtual Human Interaction Lab」では、複数の被験者にスクリーンの付いた特殊なヘルメットをかぶってもらい、スクリーンに本人の顔を生き写しにしたアバターを映し出し、自分がまるでその部屋にいるかのように錯覚させる実験を行った。

 すると、仮想世界で見た自分のアバターの行動を、被験者が実生活でまねる傾向があることが分かった。研究をまとめたジェシー・フォックス(Jesse Fox)氏は、アバターが人間の「良い行動モデル」となる可能性を秘めていることが明らかになったと結論付けている。

■アバターを使えばダイエットも楽々?

 実験では、仮想世界で自分のアバターが走る映像を見た被験者は、その後24時間以内にジョギングをしたりスポーツジムに行くなどの傾向がより強かった。

 アバターが「おやつ」にニンジンをかじり、やせていく様子を見た男性の食生活は以前より健康になったが、キャンディーをなめてばかりいる様子を見た男性は、菓子ばかりを食べたがるようになったという。

 また、自分のアバターが食事をする風景を見た後では、男性はより旺盛に食べようとするのに対し、女性では食事をなるべく控えようとする傾向があるという興味深い結果も得られたという。

■似れば似るほど効果大

 フォックス氏によると、効果を得るためにはアバターを本人に似せることが肝心だという。実験では、知らない顔のアバターを見せてもその行動をまねる動機付けはされないとの結果が出た。アバターが被験者に似ていればいるほど、その行動をまねる頻度は増えたという。

 この点についてフォックス氏は、「アバターを自分の分身として認識した瞬間、無意識のうちに精神的なきずなが生まれ、自分自身を離れてアバターの役を演じようとするのではないか」と分析している。(c)AFP/Glenn Chapman

【参考】スタンフォード大の研究室「Virtual Human Interaction Lab」のホームページ(英語)