【5月28日 AFP】慶応大学(Keio University)などの研究グループは27日、遺伝子を組み換えたサルの個体を誕生させたと発表した。霊長類では世界初。サルの受精卵に特定の遺伝子を組み込み、子どものサルにもその遺伝子が受け継がれるようにすることに成功したという。ヒトの病気の治療法開発にもつながるとして注目されている。

 慶応大学・実験動物中央研究所(Central Institute for Experimental Animals)の佐々木えりか(Erika Sasaki)室長らのチームは、ブラジル原産の小型のサル「コモンマーモセット」を使った実験を行った。

 外来遺伝子が付着したウイルスをマーモセットの胚(はい)に導入し、この胚に緑色蛍光タンパク質(GFP)を作る遺伝子を組み込んだ。GFPはもともとはクラゲから抽出されたもので、紫外線を当てると緑色に光ることから、バイオテクノロジーの世界では一般的に「マーカー」として使用されている。

 こうして遺伝子が組み換えられた胚を、7匹の「代理母」の胎内に戻した。うち4匹が妊娠し、計5匹の子どもを産んだが、子どもにはいずれもGFPが受け継がれていた。うち2匹では生殖細胞にもGFPが導入されており、うち1匹で、その子ども(第2世代)にもGFPが受け継がれたという。

 実験動物としてはマウスが一般的だが、アルツハイマー病やパーキンソン病といった難病を再現させることは非常に難しかった。そのため、人間に近い霊長類に病気の原因遺伝子を組み込む実験が可能となり、治療法の開発に弾みがつくことが期待されている。

 研究の詳細は、28日発行の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載されている。(c)AFP/Richard Ingham