【5月7日 AFP】2003年にインドネシアのフロレス(Flores)島の洞穴で化石が発見された「ホビット(Hobbit)」との愛称をもつ原始時代の小型人類は、ヒトの新種であり、病気で脳が萎縮したピグミー族ではない――6日発行の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に、その根拠を説明した2つの論文が発表された。

 フロレス島で発見された化石は約1万8000年前のもので、「ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis、フロレスの人の意)」と名付けられた。身長1メートル、体重30キロという小型の体形から、英国の作家J・R・R・トールキン(J.R.R. Tolkien)の小説に登場する小人「ホビット」の愛称がつけられている。

 人類学者らは、約8000年前まで島の洞穴で暮らし、道具を使って狩りをしていたこの人類の起源について、激しい議論を戦わせてきた。

 主流なのは、原人(ホモ・エレクタス、Homo Erectus)を祖先に持つ原始人類であり、限られた面積に適応するために体が小型化する「島嶼化(とうしょか)」による自然選択により、長い年月の間に成長を妨げられてきたとする説だ。

 だが、この説では、ホビットの脳の容量がチンパンジーと同程度の400cc、つまり現代人の脳容量の3分の1しかなかったという事実を説明できないとする学者もいる。その程度の脳容量の人類がなぜ石器を製作できていたのかの説明も必要だ。

 脳の小ささについては、これまでに発見されたいくつかの化石に遺伝子疾患を患っていた形跡があることが発見されており、これが「異常に小さい頭蓋骨」の原因ではとの説が有力だ。また最近では、甲状腺の機能不全による「小人症」であったとする説も発表されていた。

■ホビットの祖先はホモ・ハビリス?

 今回「ネイチャー」に掲載された2本の論文は、こうした謎に深く切り込むと同時に、論議を呼ぶことは必定の新たな説を提示している。

 ニューヨーク州立大学ストニーブルック校(State University of New York at Stony Brook)のWilliam Jungers氏率いる研究チームは、ホビットの足に着目した。

 ホビットの足は、第1指がほかの指と平行になっており、関節によって全体重を支えられるようにつま先が伸縮可能な構造になっている。これはまさしく人類の特徴であり、類人猿には見られないものだ。その一方で、現代人と比べ非常に指が長いことや第1指が非常に小さく、長くてカーブを描いている外側の指で体重を支えるという構造は、チンパンジーに似ている。
 
 最近ケニアで発見された人類学的な証拠によると、現代人の足は150万年以上前、つまりホモ・エレクタスの登場以後に進化したことがわかっている。したがってホモ・フロレシエンシスは、「逆進化」したのではない限り、それ以前に人類から分化したことが考えられるという。

 研究チームは、「ホモ・フロレシエンシスの祖先はホモ・エレクタスではなく、東南アジアへ拡散していたことも考えられるホモ・ハビリス(Homo habilis)であると考えられる」と結論付けている。

■ホビットの脳はなぜ小さいか

 ところで、上記の説はホビットの脳が小さい理由を十分説明していないが、ロンドン自然史博物館(Natural History Museum in London)のエレノア・ウェストン(Eleanor Weston)、エイドリアン・リスター(Adrian Lister)の両氏は、カバの化石を使ってその説明を試み、その結果を「ネイチャー」に掲載した。

 2人はマダガスカルで発見された古代のカバの化石と、アフリカ本土で発見されたそれらのカバの祖先の化石を比較。すると、「島嶼化」により、これまで考えられていた以上の脳の縮小化が可能であることがわかった。

 だが、ハーバード大学(Harvard University)のダニエル・リーバーマン(Daniel Lieberman)教授は、「ホビットが、ユーラシア大陸各地で化石が発見されているホモ・エレクタスから進化したのか、アフリカ大陸でのみ化石が発見されているそれ以前の祖先から進化したのかを判定するには、さらなる化石という証拠が必要だ」とコメントしている。(c)AFP/Marlowe Hood