【4月6日 AFP】髪の毛のない、子どものような外見をした身長130センチ、体重33キロのロボットが、椅子に腰掛け、呼吸に合わせて肩を上下させている。その黒い目は、部屋の中のあらゆる動きを追っている。ロボットではあるが、周囲に注意を払っているように振る舞っている。

 この人型ロボット「CB2」(Child-robot with Biomimetic Bodyの略)のシリコン製の柔らかい皮膚の下にはデータ収集用のプロセッサが埋め込まれている。収集されたデータは、記録・評価されて、社会生活を学習できるように設計されている。まるで赤ちゃんがお母さんとの関係性の中で身につけていくように、ロボットは人と接したり相手の表情を観察しながら、ソーシャルスキルを徐々に発達させていくという。

 開発を指揮した大阪大学(Osaka University)の浅田稔(Minoru Asada)教授は、「乳児および幼児の頭には非常に限られたプログラムしかないが、学びのための余白はある」と話す。

 研究チームは、このロボットに母親のさまざまな表情を観察する赤ちゃんのような感情を持たせ、そうした表現を「幸せ」「悲しい」といった基本的なカテゴリーに分けることを目指している。具体的には、アイカメラで情動表現を記録・記憶し、あらかじめクラスターに分類しておく。実際の感情表現データと照合することで、どの感情表現クラスターに識別されるか判断することが可能になる。

 ロボットは、皮膚の下にある197個のフィルム状の圧力センサーにより、頭をなでられるといったヒューマン・タッチを認識することもできる。

 浅田教授のプロジェクトには、ロボット工学のエンジニア、脳科学者、心理学者など多数の専門家が参加。科学技術振興機構(Japan Science and Technology AgencyJST)が支援している。
 
■子どもロボットの「成長」

 CB2が初めて登場したのは2007年のこと。その後の2年間で、51の空気圧駆動の「筋肉」で、人間に支えられてスムーズに部屋を歩き回ることができるようになっているという。

 浅田教授は、科学の発展により、今後数十年以内にヒトと類人猿の中間あたりの学習能力を持つ「ロボ種」が登場すると、大胆に予測。向こう2年間で、CB2を基本的な文章を話せる2歳児程度の知能を持つ子どもロボットに発展させたいとの希望を語った。

 そして教授は、2050年までに、研究室のロボットたちをサッカーW杯の優勝チームと対戦させ、「勝つ」ことを夢見ている。(c)AFP/Miwa Suzuki