【2月3日 AFP】発光する小型のイカ、ダンゴイカの体内にいるバクテリアに、次世代抗生物質につながる新しい概念を切り開く遺伝子があることを発見したとする論文が、1日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)の研究チームは、太平洋に生息するダンゴイカ(学名:Euprymna scolopes)の体内に共生する海洋性発光バクテリア「ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)」に着目した。このイカは夜間に海表面近くで餌を食べる際、このバクテリアを使用してわが身を月明かりのように見せかけ、捕食者から身を守る。

■バクテリアの活動をコントロールしていた制御遺伝子

 チームは、このイカのビブリオ・フィシェリ変異体のゲノムを解析後、サンゴ礁に住む魚である「マツカサウオ」に共生しているビブリオ・フィシェリのゲノムと比較した。マツカサウオは夜に餌を探す際、このバクテリアのおかげで懐中電灯のように光ることができる。

 まったく違う生物種の相手と共生する2つのバクテリアを比べ、そのわずかな、しかし本質的な違いを探ることがチームの目的だった。

 比較の結果、両者のバクテリアのゲノムは驚くほど近かった。これはバクテリアが数百万年の間、環境にうまく適応しながら進化していたことを物語っている。

 逆に大きな違いは、イカのビブリオ・フィシェリには、魚のビブリオ・フィシャリにはない「制御遺伝子」があるという点だった。この遺伝子はスイッチのような役割を果たし、これがほかの遺伝子のスイッチを「オン」にすると、バイオフフィルム(生物膜)を倒し、この発光性バクテリアがイカの発光器官の中に移動することを可能にしていた。

 人間もあらゆる生物と同様、さまざまなバクテリアと共生していることから、こうした発見には重要な意味があると研究者らは考えている。自然界から人体内に取り込まれたバクテリアや細菌は、食物をエネルギーに変えたり、体を病気から守るなどの有用な働きをする。しかし中には大腸菌のように、有害な働きをするものもある。

 研究者らは、バクテリアや細菌を「ジキル博士」(善玉)から「ハイド氏」(悪玉)に変化させる制御遺伝子を特定することができれば、病気を誘発しないようバクテリアのスイッチをオフにしておく治療法が見出だされるのではないかと考えている。(c)AFP