【11月20日 AFP】(一部更新)約1万1000年前の氷河期末期に絶滅したケナガマンモスの全遺伝情報(ゲノム)の半分近くを解読したとする研究結果が、19日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に掲載された。

 米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)のステファン・シャスター(Stephan Chuster)氏率いる研究チームは、シベリアの永久凍土から発見された数万年前のケナガマンモス2頭から採取した毛から、細胞核DNAを抽出して分析した。2頭のマンモスはそれぞれ約2万年と5万年前に死んだとみられる。

 この結果、現存する最近縁種のゾウとの比較が可能となり、類似する両者のDNAの違いはわずかに0.6%であることが分かった。この違いは、人間とチンパンジーのゲノムの違いの半分でしかない。ただし、現時点では分析データに重要な部分がまだ不足しているため、ゲノムの完全解読には至っていないという。

 チームは2007年、初めてマンモスの毛からミトコンドリアDNAを抽出して、解読すること成功したが、今回の研究では細胞核DNAに注目したという。

 論文の共同執筆者のウェブ・ミラー(Webb Miller)氏は、AFPとの電話インタビューで「無作為に抽出したDNA配列を解析した結果、ゲノムの50%を解読できたと考えている」と語った。

 このマンモスの毛を用いた手法は、これまでの手法と比較して大きな前進をもたらしたという。これまでは、凍結したマンモスの骨の骨髄からDNAを採取していたが、数千年もの間に繰り返された凍結と融解で水や細菌が多孔質の骨から侵入し、DNAが激しく損傷している可能性があった。しかし、毛の場合は、角質層を構成するケラチンが、驚くほどしっかりと内部のDNAを保護しているという。

 研究チームは、毛という新しい試料に加えて新技術を駆使し、数年前と比較してほんのわずかな時間でDNAの塩基配列解読が実現されるようになった。

■マンモスの復活は可能か?

 マンモスのゲノム解読は、映画『ジュラシックパーク(Jurassic Park)』のように、いつか氷河期の動物たちをよみがえらせることができるのではないかとの議論を誘った。これらの種が絶滅したのは比較的最近で、遺骸は氷点下の厳しい寒さの中で保存されていたため、DNAを再現できる可能性もあるとされるからだ。

 ミラー氏によると、理論上はいつの日かマンモス、というよりは「マンモスのような動物」の復活は可能だという。ゾウのゲノムを採取し、ゾウに固有な遺伝情報を取り除いて、それをマンモスのものと入れ替える。新しい情報ををゾウの卵子に融合させるため細胞核を入れ替えて、雌のゾウの子宮に移す。

 しかし、それを達成させるためには技術的な障壁があり、費用も膨大になるという。まずは、ゾウのゲノムを、誤りのない完璧なマンモスのゲノムと比較するところから始めなければならない。ゾウのゲノムは来年にも公開される見通しになっている。(c)AFP