【9月26日 AFP】(写真追加)太陽風の強さが、過去50年間で観測された中で最低の水準に低下していると、米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の共同プロジェクト「ユリシーズ計画」の科学者チームが発表した。

 太陽風とは、太陽の上層大気から時速数百万キロで放出される粒子の風。NASAとESAが共同で打ち上げた太陽探査機「ユリシーズ(Ulysses)」によって観測されている。太陽風は太陽系を取り巻く太陽圏を膨張させ、それによりほかの天体から発せられる放射線から内惑星を保護していると、科学者は考えている。 

「太陽風が観測史上最低レベルであるため、太陽圏の規模が縮小する可能性が極めて高い。そうなれば、より多くの銀河宇宙線が太陽系の内部に入り込むだろう」と、米カリフォルニア(California)州パサディナ(Pasadena)にあるNASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)のユリシーズ計画研究員、エド・スミス(Ed Smith)氏は述べている。

 太陽風の強さが低下しているのは、太陽の磁場で変化が起きていることが原因とみられるが、その変化の原因については不明だという。通常、太陽活動は11年周期で活発化したり沈静化したりするが、ユリシーズの最近の調査結果によると、太陽活動が最小の状態である期間が予想以上に長引いていると、スミス氏は指摘している。

 この調査結果は、地球物理学の研究雑誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。

 ユリシーズの打ち上げは、太陽の極地域上空の宇宙環境について調査する初のプロジェクト。ユリシーズが収集したデータは、太陽と、それが地球に及ぼす影響に関する従来の考え方を根底から変えた。ユリシーズは、予想されていた設計寿命の4倍以上となる約18年間、5億3900万キロ以上を飛行している。(c)AFP

  • 関連サイト:米航空宇宙局ジェット推進研究所のユリシーズ計画に関するサイト(英語)