【7月18日 AFP】約9300万年前、地球上の大陸の配置は大再編され、大気の平均気温は現在のおよそ2倍もあった。後年アラスカ(Alaska)となる土地にはヤシの木が生い茂り、カナダ北部には大型爬虫類が闊歩(かっぽ)し、大西洋は氷が浮かんでいないどころか、温水プールのようなぬるい温度だった。

 当時の地球はのどかだったように聞こえるが、生物学的には天国と呼ぶには程遠い状態だった。当時の地球では、海中の酸素が不足し、長年かけて進化していた海洋生物たちが一斉に死滅したばかりだったのだ。

 この時の大規模な集団絶滅により、海洋生物の死骸は厚い層をなして海床に降り積もり、いくつもの地質年代を経て石油となった。この大量絶滅の後、大気中の温暖化ガスのレベルは激減し、地球は突然短い冷却期間に入った。

 白亜紀後期に起こったとされるこの驚異的な「海洋無酸素事変」がどのように発生したのか、地球学者らは長年、頭を悩ませてきた。

■生物の大絶滅引き起こした「海洋無酸素事変」

 この謎について、カナダ・アルバータ大学(University of Alberta)の研究チームは、当時の海底火山の噴火が海中の化学成分や、ひいては大気中の化学組成をも変化させたのだと説明している。

 同大で地球大気科学を研究するスティーブン・タージオン(Steven Turgeon)氏とロバート・クリーサー(Robert Creaser)氏は、南米沖やイタリアの山岳地帯で掘削される黒色頁岩(けつがん)に含まれるオスミウム元素をアイソトープ・レベルで分析することで、古代海底で起こった火山活動を知るヒントが得られると述べている。この海底火山の噴火は大絶滅から2万3000年ほど前に起きたもので、激しい噴火の結果流れ出した溶岩が、カリブ海の海底を作ったのだという。

 研究は17日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。研究論文を審査した米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)のTim Bralower氏(地質学)によると、この研究から、その次に起こった化学現象を説明する互いに矛盾しない2つの説を導き出せるという。

■発生の仕組みを説明する2つの説

 一つは、噴火により金属成分が豊富な流動体が放出され、これが海床の上部層に微量栄養素をもたらしたという説だ。植物プランクトンと呼ばれる海面の微小な生命体がこれらを盛んに餌とし、成長するに伴い炭素を蓄積した。こうした炭素が海床に沈んで腐敗し、海中の酸素が失われたとしている。

 もう一つは、海底火山から大気中に二酸化炭素の雲が吐き出され、地球温暖化をあおり、海洋循環システムをほぼ停止するまでに至らせたという説だ。海洋面以外の水は循環しなくなってしまい、無酸素状態が生まれたというわけだ。

 Bralower氏によると、この古代の火山活動後のシナリオの解明は、現在の地球温暖化に関する未知の問題と取り組む助けになるという。

 より気温が高い場合の海洋循環への影響や、海洋鉄散布によって植物プランクトンを活性化させ大気中の二酸化炭素を吸収させるという賛否両論の技術によって、温暖化が緩和されるのか、あるいは海底で酸素不足を引き起こすのかといった問いに関する答えが得られる可能性がある。(c)AFP