【7月1日 AFP】ちょうど100年前の1908年6月30日の明け方、西シベリア(Siberia)の上空で大爆発が起こり、2000平方キロメートルにわたり樹木8000万本がなぎ倒された。爆発の規模が広島に投下された原子爆弾の1000倍にも匹敵するというこの「ツングースカ大爆発(Tunguska Event)」の謎は、いまだ解けていない。

 現場の近くに居合わせた遊牧民エヴェンキは、爆発の衝撃で家や家畜が空中に投げ出された様子を語った。現場から1500キロメートル離れたイルクーツク(Irkutsk)では、爆発による衝撃が地震として感知された。また、この爆発はあまりにも巨大だったため、英ロンドン(London)では夜空の下で新聞が読めるほどだったという。

 爆発の原因には複数の説がある。200-1000年に1度の発生が予想されるこうした大爆発への対策を目指し、科学者らは、真の原因の究明に奮闘している。

 最も有力な説は、数百年間宇宙を旅してきた岩石が軌道から外れ、地球に衝突したというものだが、こうした「突発的な衝突」理論を提唱する科学者たちでさえ、それだけでは説明できないことを認めている。

 岩石が大爆発の原因だとすると、火星と木星の間にある小惑星帯の軌道を外れた小惑星か、太陽系を回る彗星(すいせい)の可能性がある。

 彗星は小惑星よりもはるかに速度が速いため、衝突時には同じ重量の小惑星よりも大きな運動エネルギーを放出する。小さな彗星でも、大きな小惑星に匹敵する衝撃を与えることになる。

 ただし、これまで数々の現地調査が行われているにもかかわらず、大爆発の原因とさられる物体の破片は見つかっていない。

 複数の研究者らは、地球近傍天体(Near Earth ObjectNEO)が地球に衝突するリスクを測定するためにも、破片を発見することが重要だとしている。

 彗星は小惑星よりもはるかに数が少ないが、その軌道周期が数十年から数百年と極めて長いゆえに、大半の彗星が「まだ知られていない」という不安要素がある。地球に衝突する進路にある彗星はまさに、暗闇からいきなり現れて衝突するので、防ぐ余地がないのだ。

 また、ツングースカ大爆発が彗星または小惑星の衝突が原因によるものだとしても、その物体の大きさについてはわかっていない。ただ、地面の破壊規模から、3メートルから70メートルと推定されている。

 専門家らが一致しているのは、この物体が大気中のちりと摩擦して熱せられ、数キロメートルから10キロメートルの上空で爆発したという点だ。

 今週発売される英科学誌ニュー・サイエンティスト(New Scientist)には小惑星も彗星も大爆発の原因としないボン大学(Bonn University)の物理学者、Wolfgang Kundt氏の説が発表される。同氏によると、彗星または小惑星の衝突説は薄い。

 地表の奥深くにたまった、メタンを多く含むガス1000万トンが地上に噴出したというのが、同氏の説だ。ノルウェー沖海底の700平方キロメートルにも及ぶ裂け目「Blake Ridge」が同様の例だという。(c)AFP