【3月7日 AFP】脳の動きを解析し、何を見ているかを推測する―。脳解析での劇的な進歩となるこのような実験に成功したとの論文が5日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)のジャック・ギャラント(Jack Gallant)氏率いる神経科学者チームは、見た画像を識別する脳の領域の信号の解読に成功したという。

 研究チームは、脳内の血液の微細な流れをとらえ、光、音、接触によって脳のどの領域が刺激されるかを示す非侵襲のスキャナー「機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imagingfMRI)」を使い、実験を行った。

 実験では、網膜から送られた画像を再構成する、脳前方にある視角野に注目。被験者2人に対し、馬、木、建物、花など1750枚の画像を見せたときの視覚野の主要3領域での血液の流れを基に、コンピューターモデルを作成した。

 このモデルを使い、別の120枚の画像によってどのようなパターンが視角野に現われるかを予想した。その後、実際に被験者に同じ120枚の画像を見せて脳の動きをスキャンした。コンピューターはその脳の動きと予想した脳の動きを比較し、被験者が見たと思われる画像をピックアップした。すると、1人の被験者では92%、もう1人の被験者では72%の正解率が得られた。

 ギャラント氏はこの実験について、観客にカードを選ばせそれが何かを当てるマジシャンになぞらえ、「まず、たくさんのカードの中から1枚を選んでもらう。そして選んだカードを見ている人の脳の動きを測定し、どのカードを選んだのかを当てる」と説明した。

 カードの枚数を120枚から1000枚に増やして1人目の被験者で実験したところ、正解率は82%と、わずかに下がっただけだった。

「画像が10億枚あっても、正解率は20%程度になる」とギャラント氏は語る。一方、このモデルは人の思考を読むことはできず、決められた画像の中からどれを見ているかを認識することができるだけだとも指摘している。(c)AFP