【11月19日 AFP】魚類資源の激減や気候変動の影響に対する懸念の中、多様な海洋生物の個体数を調査してきた世界的なプロジェクト「Census of Marine Life (海の個体数調査)」が完了まじかだ。

 海洋生物の種類は驚異的に多岐にわたっている。雪男のように真っ白で長い柔毛におおわれたカニ「キワイダ」の発見や、これまで知られていなかった「ホオジロザメ」の移動パターンの解明などはあったものの、まだ発見されていないものの数と比べると、これらは大河の一滴に過ぎない。

■100万種以上の海洋生物は未知の領域

 ニュージーランドの首都オークランド(Auckland)で前週開かれた会議には、同プロジェクトにかかわる80か国2000人近くの科学者のうち約200人が集まり、センサスが終了する2010年までに、どのように成果をまとめるかを話し合った。

 これまでのところ、バクテリアから海の最大捕食動物までに至る17の研究によって、5300種の海洋生物が新たに発見された。

 世界の海洋生物の種類は140万から160万種と推計されているが、これまでに特定されているのは23万種のみ。2002-2003年に新たに特定されたのは1555種で、このペースでいけば、すべての種の特定には881年を要するとの試算もある。

 一方、同プロジェクトを率いる科学者の一人、カナダのダルハウジー大学(Dalhousie University)のRon O'Dor教授(生物学)は、この個体数調査が研究の新分野を開きつつあると期待する。「何を知らないかを知ることは、何を知っているかを知るのと同じくらい重要だ」と同教授は語る。

 このプロジェクトでは、海山や南極の氷の下400メートルに生息する生物の調査なども行われており、これまでに知られていなかった種や生息地域が解明されつつある。

■生物の移動は、気候変動の影響を知る鍵

 新たな技術により、より深い海域の調査も可能となり、サメやカメ、アザラシなど大型海洋生物の移動の様子も追跡できるようになった。

 22頭のカリフォルニア・アシカに関する研究によると、近年、通常より温かい海水の影響で、カリフォルニア・アシカが太平洋のはるか沖合に移動しているという。このような事実は海洋生物が気候変動にどのように対応するかを知る手掛かりとなる。

 一方、細菌やウイルスなどの海洋微生物は、海洋生物の98%を占めるにもかかわらず、さらに知られている事柄が少ない。

 ダルハウジー大学のHeike Lotze博士によると、同プロジェクトにより、河口地域に生息する生物の7%が世界的または地域的に絶滅の危機にあり、36%がかつての個体数の10%以下まで減少していることが判明したという。「人間による搾取が絶滅の最も重要な原因だ。生息地の減少、汚染がそれに続いている」と同博士は指摘する。(c)AFP/David Brooks