【10月12日 AFP】一般に「値段の高いランニングシューズを買えば、安価なシューズよりけがをする確率は低くなるはずだ」と思われている。ところが、この定説を覆す研究結果が、11日発行のBritish Journal of Sports Medicineに掲載された。

 この研究は、スコットランドのダンディー(Dundee)にある医学大学The Institute of Motion Analysis Research at Ninewells Hospital and Medical Schoolの研究チームが行ったもの。チームは、メーカー3社の価格帯の違うランニングシューズのクッションが、足への衝撃をどれだけ和らげるかを検証する実験を行った。

 実験では、シューズを、40-45ポンド(約9500円-10700円)、60-65ポンド(約14300円-15500円)、70-75ポンド(約16700円-17900円)といった、低・中・高の3つの価格帯に分類し、メーカーのロゴなどをテープで隠した。43人の若い男性被験者がそのシューズを履き、研究室内の通路20メートルを歩いた。その後、通常歩行の場合と比較するため、うち9人の被験者がランニングマシンでランニングを行った。

 シューズには中敷きの形をした薄い加圧板が装着され、かかと・前足・親指にかかる圧力が測定できるようにした。圧力が高ければ、ランナーが地面と接触する際に足にかかる負荷が高いということになる。加圧板のデータは、被験者が背負うバックパックの中に入れられた機械で集計した。  

 実験の結果、足底への圧力は高価格帯の靴よりも低・中価格帯の靴の方が全体的に低いことが分かった。つまり、価格の安いランニングシューズでも、外部からの衝撃を高額なシューズと同じくらい和らげることができるどころか、安いシューズの方が優れているという結論が導き出されたという。

 また、靴のメーカーを明かさないまま被験者らに履き心地を評価させたが、その好みは極めて主観的なもので、圧力の分散の仕方と靴の値段の間に関連性は見られなかった。

 ランニングは衝撃の大きい運動で、地面と接触する瞬間は体重の2.5倍に相当する衝撃がかかる。また、スピードや疲労が高まることで衝撃はさらに増大するという。ランニングの衝撃は足の骨から体全体に伝わり、ひざのけが、シンスプリント(すねの痛み)、肉離れ、アキレス腱炎などの原因となるが、運動靴を履くことによって、衝撃を実際の3分の1程度軽減できるとされている。

 なお、今回の実験では、研究用と私物のランニングシューズの履き心地の違いや、長時間テストされることによってシューズのクッションの効能が低減する点については考慮されていないという。(c)AFP