【10月6日 AFP】放射能も発見されず、映画もなかった100年以上前に創設されたノーベル賞(Nobel Prize)。情報技術と気候変動で特徴づけられる現代でも意味を持ち続けるのだろうか。

 ノーベル賞は、1895年にスウェーデン人の発明家、アルフレド・ノーベル(Alfred Nobel)が1895年に書いた遺言によって創設された。生理学・医学、物理学、化学、文学、平和の各分野ですぐれた業績を残した人物に賞が贈られる。

 この遺言に基づき、1901年以来ノーベル賞は現代にいたるまで世界の主要な賞として存続している。1968年にはスウェーデン中央銀行により、経済学賞がつけ加えられた。

 ノーベル賞は現代社会においても重要な意味を持つのかとの問いに、米国の科学誌「サイエンス(Scienece)」の編集長ドナルド・ケネディ(Donald Kennedy)氏は、「その価値はなお一層増している。ノーベル賞が創設された当時よりも、現代の方が圧倒的に多くの、わくわくするような、画期的な発見が行われている」とAFPに語った。

 しかしその一方で、「自然科学のフィールドでより重要になりつつある分野が賞に含まれていないのも事実」だと述べ、例として生態学や環境科学を挙げた。

 気候変動に関係の深い大気学と海洋学とを組み合わせた研究は、通常の物理学には当てはまらず、該当するカテゴリーがない。しかし、現存する分野の幅を広げることは可能で、例えば物理学賞に大気化学が含まれることは考えられるという。

 しかし、 ノーベル財団のMichael Sohlman専務理事は、これ以上、ノーベル賞の分野を増やすつもりはないと断言している。

 他の機関や財団では過去数十年にわたってノーベル賞に該当しない分野に与える同等の賞を創設してきた。

 「数学のノーベル賞」といわれるフィールズ賞(Fields Medal)もそのひとつで、1936年から賞が贈られている。ノーベル氏の愛した女性が数学者とつきあっていたために、意図的に数学は除かれたとの説があるが、その真偽のほどは定かではない。

 さらに最近は、優れた技術発明に贈られるミレニアム技術賞(Millennium Technology Prize)がフィンランドで創設され、2004年にはワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)を発明したティム・バーナーズ・リー(Tim Berners-Lee)氏が受賞した。

 ミレニアム技術賞を統括するミレニアム賞基金(Millennium Prize Foundation)のTapio Alvesalo事務局長は、同賞を「ノーベル賞を補うようなかたちの賞」と位置づけ、工学技術やテクノロジーのための国際的な賞がなかったことが創設のきっかけになったと説明する。

 2005年に米国で活動するノルウェーの慈善活動家、フレッド・カブリ(Fred Kavli) 氏が、宇宙物理学、ナノサイエンス、脳神経化学を対象にした賞を2008年に開始すると発表したとき、英The Economist誌はノーベル賞への挑戦と評した。

 しかしサイエンス誌のケネディ編集長はこう語る。「それでもノーベル賞は金本位制における金のような、最も確かな基準なのです」 (c)AFP/Sophie Mongalvy