【9月30日 AFP】(10月1日一部更新)フェースブック(Facebook)などに代表されるソーシャルネットワーキングサイト(SNS)は、ユーザー間の連絡の取りやすさを売りに、数百万人の会員を獲得してきたが、オンライン上でコミュニケーションをとることによる落とし穴、すなわち個人情報の安全性をめぐる懸念への対処はユーザー自身に任されている。

 現在、SNSにおける個人情報の取り扱いに関して激しい論争が巻き起こっているが、きっかけは、フェースブック会員のプロフィルが最近、グーグル(Google)やヤフー(Yahoo!)など一般の検索エンジンで閲覧できるようになったことだ。

 SNSの会員は、ネット上での旧友との再会や、新たな友人作りを目的に、個人的な好き嫌い、連絡先、勤務先、出身校などを記載したり、写真をダウンロードしたりして、プロフィルを作成する。

 会員がこの目的を効率的に達成しようとすると、個人情報をプロフィルに書き込むこととなるが、このような個人情報は、特定の消費者層に商品を売り込もうとする広告主は言うまでもなく、ID詐欺師、教師、雇用主、ストーカー、あるいは親などの目にさらされることになる。

 ニューヨークのペース大学(Pace University)でSNSの問題を教えるCatherine Dwyer氏は、「交流をもつためには、積極的な参加と情報の公開が必要になる。プライバシーは、友人を少人数に限定することを意味するが、これは積極的な会員になることとは相いれない」と、この難問の要点を語る。

 フェースブックは2004年、米ハーバード大学(Harvard University)の交流サイトとしてサービスを開始したが、その後対象を拡大し、急速な成長を果たした。現在世界各地に4200万人の会員を持つが、理論上は、誰もが会員のプロフィルを閲覧できるわけではない。

 フェースブック以前にサービスを開始し、米国内だけで毎月のべ4700万人の会員がアクセスするとDwyer氏が指摘するSNSのマイスペース(MySpace)では、プロフィルは一般公開されている。

 これに対し、フェースブックでは、プライバシー設定をカスタマイズすることで、会員は自身のプロフィルを閲覧できる相手を友人のみ、あるいは自身と同じ勤務先や学校に所属する人のみなどに限定することが可能だ。

 だが、フェースブックがグーグルなどの検索エンジンに新たなリンクを設定すると発表したことで、大学生が校内の友人らと連絡を取り合うための手軽なツールとして出発した同サイトの会員の間で、サイトが悪趣味な個人名簿に成り下がるとの不安が広がることとなった。

 フェースブックのエンジニア、Phil Fung氏は、新たなリンクの設定が「より多くの会員に出会いの機会を作る」とし、プライバシー設定のカスタマイズ機能は維持されると強調するが、その真意を推測すると、インターネット上での露出を多くすることで、将来的な株式公開を前に企業価値を増大させることを狙っているとも読み取れる。

 コンピューター・セキュリティー対策大手のソフォス(Sophos)は、先月公表されたレポートの中で、フェースブックの会員の多くはプライバシー設定のカスタマイズ機能を効果的に利用していないとの調査結果を発表している。

 ソフォスの技術コンサルタント、Graham Cluley氏によると、同社が偽のプロフィルを作ってフェースブック会員200人に友人になりたいと連絡したところ、41%がこれに同意してすべての個人プロフィルの閲覧を許可した。明かされたプロフィルの多くは、会員のパスワードを推測したり、その会員になりすましたり、あるいはその会員にストーカー行為をするのに十分なものだったという。

 フェースブックは会員にプライバシーを守る手段を提供しているが、多くの会員は「他の会員よりも多くの友人を持つという名声の獲得に熱心になるあまり、注意深さに欠けて自身のプライバシーに無頓着になっている」とCluley氏は語る。

 ソフォスは、会員のこのような行動が身分詐称につながる危険性についてとりわけ強い警告を発しているが、安全なインターネット利用を目指す英政府主催のキャンペーン「Get Safe Online」のTony Neate氏は、「極端に不安をあおる」ことがないよう警告している。

 ある元刑事が明らかにしたところによると、最近、ある女性がロンドンのナイトクラブで財布を盗まれ、犯人がインターネットで被害者の名前を検索して個人情報を入手したことから、クレジットカードの不正使用被害が拡大するという事件が発生したという。

 だが、この元刑事は、このような事件はまれだと語り、「不安をあおるのではなく正しい知識を広めることが大切。インターネット上で公表する情報と、使用される可能性がある情報について気をつけなければならない」と語る。

 また、予期せぬところで「スパイ」のターゲットにされることもある。
 
 特に10代や20代の若い会員は、大学職員や就職内定先による素行調査で発覚したSNS内での言動について、突然注意を受けることがあるという。

 英オックスフォード大学(Oxford University )の学生Alex Hillさんは、フェースブック内で公開された写真を根拠に、校則に違反し、風紀を乱したとして大学側から注意を受けたと7月に英ガーディアン(Guardian)紙に話している。

 同大学の学生自治会は、学生に対しフェースブックのプロフィル公開を制限するよう助言しているが、Martin McCluskey自治会会長によると、現在でもオックスフォード大学の多くのフェースブック会員が、数万人に上る校内のすべての会員からのプロフィル閲覧を許可する設定を継続しているという。

 一部の会員にとって、プライバシー問題はより大きな意味を持つ。米共和党の大統領候補者、ルドルフ・ジュリアーニ(Rudolph Giuliani)前ニューヨーク市長の17歳の娘が、フェースブック内で米民主党のライバル候補、バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員を支持するグループに参加したことが前月メディアで報じられると、政界の嵐に発展する様相にまで至った。ジュリアーニ氏の娘は、プロフィルの削除を余儀なくされたという。

 ペース大学のDwyer氏は「人々は自身を表現し公開する新たな方式を取り入れようとしているが、試行錯誤している状態。各人が自分の判断を信じて表現している」と話す。

 フェースブックで最多の友人を持つロンドン在住のCharlotte MacCormackさん(17)は、誰が自身の詳細なプロフィルを閲覧できる状態なのか「はっきりとは分からない」と明かすが、同時に「もしそのようなことが心配であれば、フェースブックを利用していない」と語っている。(c)AFP/Alice Ritchie