【9月6日 AFP】(9月7日更新)地球上で6500万年前に恐竜が絶滅したのは、それをさかのぼることおよそ1億年前に、「小惑星帯」と呼ばれる火星と木星の間にある小惑星の軌道が集中している領域で、2つの小惑星が衝突したことによるとの研究結果が5日、発表された。

 発表したのは、米コロラド(Colorado)州サウスウエスト研究所(Southwest Research Institute)の研究者、William BottkeDavid Vokrouhlicky、およびDavid Nesvornyの3氏。

■小惑星の衝突でできた破片が地球に衝突

 小惑星の衝突によりできた巨大な破片が衝突したことで地球では気候変動が起こり、恐竜時代が終わりをむかえ、ヒトを含むほ乳類の時代がやってきたという。また、衝突した小惑星の別の破片は、月、金星、火星にも衝突し、クレーターを形成したとしている。

 この研究は、太陽系が形成される際にできた軌道上の破片がどのように衝突するかを、移動時間、破片の復元、および炭素化学の手法が取り入れられたコンピュータ・シミュレーションで行われた。

 研究結果を導く鍵となったのは、バティスティーナ(Baptistina)と呼ばれる巨大な小惑星で、より小さな岩石の一群と同じ軌道を回っている。

 シミュレーションで時間をさかのぼった結果、バティスティーナの破片はそれぞれが符合するだけでなく、もともと1つの巨大な小惑星の一部であったことが判明。その巨大な小惑星は直径約170キロメートルで、小惑星帯の最内部を回っていたと見られている。

 1億4000~1億9000万年前のいずれかの時期(おそらくは1億6000万年前ごろ)、この巨大な小惑星は、直径約60キロメートルの別の小惑星と衝突し、その結果、直径10キロメートル以上の破片300個、直径1キロメートル以上の破片14万個を含む膨大な数の岩石が誕生したと推測される。

 これらの岩石の一群は長い年月をかけて、「ヤルコフスキー(Yarkovsky)効果」と呼ばれる、太陽からの熱光子がわずかずつであるが確実に軌道上の岩石を押し出す現象により、新しい軌道上に入った。

 いん石の一群が徐々に分離していくにつれて、多数の塊が小惑星帯から少しずつ外れ、内側にある惑星の重力に引きつけられて落下。そのうちの1つで直径10キロメートルのいん石が、今からおよそ6500万年前に地球に衝突した。


■いん石の衝突による気候変動で恐竜が絶滅、ほ乳類の時代へ

 このいん石の衝突により、炎の嵐が発生して粉じんが空に舞い、日光が遮られた。

 この結果、冬が続き、植物のほとんどが死に絶え、それを糧としていた動物も絶滅する。この状況に対応できた動物、または新たな生存環境を開拓できた動物だけが生き残った。

 この衝突は「白亜紀末の大量絶滅(Cretaceous/Tertiary Mass Extinction)」と呼ばれ、その跡はメキシコのユカタン(Yucatan)半島にある直径180キロメートルのチクシュルーブ(Chicxulub)・クレーターとして今も見られる。

 同クレーターに残る堆積物のサンプルを調べた結果、「炭素質コンドライト」と呼ばれる鉱物が微量に検出された。この鉱物は、地上に残るきわめて少数のいん石からのみ発見される物質だった。これにより、バティスティーナのいん石がチクシュルーブ・クレーターと関連することが明らかになったと3人の研究者は主張する。

 シミュレーションと物証から検証した結果、「恐竜を絶滅させたのは小惑星ではなく彗星の衝突である」という従来の説を否定し、90%の確率で地球に衝突したのはバティスティーナ小惑星の破片であると結論づけた。

 さらに、70%の確率で直径4キロメートルのバティスティーナ小惑星の破片が約1億800万年前に月に衝突し、「ティコ(Tycho)」と呼ばれる直径85キロメートルのクレーターができたという。チクシュルーブ・クレーターの場合よりも確率が低いのは、シミュレーションのみによる推測のためだ。

 バティスティーナの衝突がもたらした衝撃のピークはおそらく1億年前ごろだったが、その影響はいまだに続いており、現在も多数の小惑星が地球に大接近するのは、かつての大衝突の影響によると3人は説明する。(c)AFP/Richard Ingham

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