【ワシントンD.C./米国 16日 AFP】15日発行の米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された論文によると、火星の南極の地下に膨大な凍った純水が層状に存在することが、欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレス(Mars Express)によって確認された。

 研究チームは、マーズ・エクスプレスに搭載された地下探査レーダ高度計「MARSIS(Mars Advanced Radar for Subsurface Ionospheric Sounding)」から送られた観測データを解析。

「問題の層がどのような構造になっているか、正確なところは不明だが、大部分は氷だと考えられる。水(H2O)の蓄積層としては、火星上でも最大規模だ」と説明している。もしこの氷が完全に解けると、火星の表面すべてを11メートルの厚さで覆うだろうと述べる。

 MARSISは地下2.7キロまでの探査が可能。解析には、「地球上で氷床や氷河の内部を分析するのに使われる一般的な技術、レーダーエコーを応用した」としている。

 ESAは2005年11月、火星の北極で地下の氷を初めて探査したときも、同様の手段を用いた。

 今月初め、同研究チームは英科学誌『ネイチャー(Nature)』に発表した論文で、かつて火星に地下水の層があった証拠を発見したとして、火星に生物が存在し得る環境があったと述べていた。

 現在の火星は乾燥し、大気中にもほとんど水分は存在しない。ちょうど46億年前の誕生直後の地球と似た環境とされる。

 ただ、多くの専門家らは、かつて火星が海に覆われ、地球に似た穏やかな環境だったとの説を支持。バクテリアのような生命が存在したのではないかとの推測が絶えない。

 また、米宇宙航空局(NASA)も先ごろ、火星表面にわずかながら流水が存在すると指摘、恐らくは地下水がわき出ているのではないかと発表している。

 米火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤー(Mars Global Surveyor)が撮影した写真には、以前撮影された同地区の写真には存在しない2つの小峡谷が写っており、科学者らは水の流れが浸食してできた可能性しか考えられないと指摘した。

 生物が存在するには、水と太陽光と酸素が不可欠とされる。

 写真は火星の南極。(c)AFP/NASA